オーストラリア大学院留学プログラム

英語教員を休職し、英語教授法を学ぶために大学院留学。
留学先で学んだことを学校での英語教育に反映したい

参加コース:オーストラリア大学院留学
留学先:2012年2月からマッコーリー大学でTESOL専攻

1971年生まれ、岩手県出身。日本の大学卒業後、岩手県にある公立高校で英語教員として勤務。2011年に家族とともに渡豪。マッコーリー大学の附属英語語学学校で20週間の事前英語学習を受講したのち、大学院課程でTESOLを専攻。2012年12月に卒業して帰国した。


事前の語学研修が大いに役立った

1日の大半を過ごした図書館

クーリンガイチェイス国立公園(シドニー)で遭遇した野生のカンガルー

シドニーの至る所にあるハイキングコース

ナショナルラグビーリーグ(NRL)のセミファイナルを観戦

一緒に学んだクラスメートとマッコリ-大学のキャンパスで

Q:オーストラリアの大学院に進学した目的は?

A:岩手県立高校の英語教員を13年間務めましたが、諸外国の英語教育事情を含め、英語教員としてのスキルや知識を高めるために進学しました。家族を同伴するため、生活に不便がないように大きな都市にある大学を探しました。

Q:大学院留学にあたり、日本ではどんな準備をしましたか?

A:大学院入学に要求されるIELTS 6.5クリアに向けて、語学力の向上に努めました。国際免許証やクレジットカードの取得、また海外から日本の銀行のお金を自由に出し入れできるようにインターネット口座の開設等を行いました。家族を帯同するにあたり、子どもの学校探しや住居・車探しなどをしました。シドニーの不動産は高騰しており、結果的に日本から住居を見つけることはできませんでした。

Q:留学前に準備しておけばよかったと思うことはありますか?

A:IELTSの受験をもっと早くから始めるべきでした。結果的に語学研修を受けることが入学の条件になったため、その分、大学院の入学時期が半期遅れることになり、仕事の休職期間との調整が大変でした。

Q:渡豪から大学院進学までのステップを教えてください。

A:次のようになります。
2010年4月    ICC国際交流委員会メール相談を開始
2010年10月初旬 大学出願書類を提出
2010年11月中旬 大学より条件付き合格の通知
2010年12月中旬 TOEFL受験
2011年1月中旬  IELTS受験
2011年2月初旬 大学から大学院開始日などの連絡
2011年4月下旬 大学へアクセプタンスフォームと関係書類を提出
2011年6月初旬 大学よりCoEの発給とvisaの申請
2011年6月中旬 visaの発給
2011年9月〜2012年2月 Academic English(語学研修)
2012年2月〜2012年12月13日 大学院(Master of Applied Linguistics)

Q:語学学校での事前研修はどのように役立ちましたか?

A:Academic English Courseの内容は大変よく研究され、充実した内容で、大学院で大変役立ちました。特に論文の書き方や盗作予防の知識は大学院で不可欠な知識で、ていねいに指導してもらいました。そのおかげで、大学院でのクラスディスカッションや課題にもよく対応できました。中には途中ドロップアウトしてしまう生徒も何人かいましたが、課題論文が書けないということが大きな問題だったようです。また事前研修ではグループディスカッションやプレゼンテーションを何度も経験しましたが、Applied Linguisticsではプレゼンテーションは全くなかったため、逆に貴重な経験になり、スピーキング力の向上に役立ちました。

Q:マッコーリーのTESOLの特徴を教えてください。

A:Applied Linguistics TESOL コースはすべての講座が講義形式で、課題はほぼ100%論文型課題でしたが、講座内容・課題内容ともに充実しており、また教授陣もとても熱心で、高い意欲を持ったいいクラスメイトにも恵まれました。ただ生徒の中には、他大学のようにもう少し実技内容(教えること)を学びたかったという生徒もいました。

Q:学生の国籍や年齢層、日本人留学生の比率などは?

A:TESOLプログラムの学生の国籍や年齢層は幅広く、20代から70代までのアメリカ、カナダ、アイルランド、オーストラリア、メキシコ、中国、韓国、日本、インドネシア、マレーシア、ベトナム、イラン、パキスタンなどからの学生で構成されていました。

Q:履修科目にはどんなものがありましたか?

A:以下の8科目を選択しました。
Communicative Grammar(必修・コミュニカティブ文法):従来の文法と機能言語学を通して言語の構造と機能について学びます。
Genre, Discourse and Multimodality(必修・ジャンル、談話、マルチモダリティー):社会記号論的観点からコミュニケーションについて学びます。
Research Methods in Language Study(必修・言語学における研究法):言語学における一般的な研究原理とその応用について学びます。
Pragmatics and Intercultural Communication(選択・言語使用の研究と異文化コミュニケーション):話し言葉及び書き言葉を通して、その状況の中で意味がどのように構築されるか分析する方法を学びます。
Classroom, Curriculum and Context(必修・授業、カリキュラム、取り巻く環境):授業やカリキュラムに影響を与える内部と外部の社会的要因について学びます。
Language Testing and Evaluation(必修・言語テストと評価):言語テストと評価における主要な概念と問題について学びます。
Second Language Acquisition(必修・第2外国語習得):言語指導がした場合としない場合の両方について、第2外国語習得に関する研究について学びます。
Language for Specific Purposes(選択・専門言語):異文化コミュニケーションに焦点をあて、専門分野やビジネスにおける言語使用の主要な問題について学びます。

Q:特に興味をもった授業はどんな内容でしたか?

A:Genre, Discourse and Multimodality(必修・ジャンル、談話、マルチモダリティー)の授業です。社会記号論的観点からコミュニケーションについて学びましたが、これまで考えたことがない視点からの英語学習や英語指導であり、とても興味深く学びました。この科目の教授、J.K.先生は、学生たちから「熱意があり、講義が面白く分かりやすい」と絶賛でした。

Q:苦労したレポートや課題は?

A:どれも苦労しましたが(笑)、以下の科目は多くの学生から難しいという声が多く聞かれました。 Genre, Discourse and Multimodality(必修・ジャンル、談話、マルチモダリティー) Language for Specific Purposes(選択・専門言語)

Q:日本と異なるユニークな教育法など、何か新しい発見はありましたか?

A:オーストラリアの大学で学び感じたことは学習環境のIT化です。講座の登録から授業料の支払い、成績の通知まですべてオンラインで処理・管理されます。毎回講座で扱う学習内容予習事項、講義のノート、また講義の録音データはilearnという自学学習サイトにアップされ、学生は自宅で学習を進めることができます。論文等課題の提出もオンラインで行われ、課題の返却から成績の通知もすべてilearn上で行われます。その他、オンラインディスカッション等も頻繁に行われます。授業や課題で課される文献等も大半が電子化されており、自宅にいながら閲覧することができます。

Q:日常的な学習スケジュールを教えてください。

A:1学期の履修科目は4科目で、各科目とも週1回2時間の講義があります。全部で週4回の講義があり、学生はオンライン学習サイトにアクセスして講義内容や読んでいくべき文献を確認し、学習を進めます。また4科目合計で約12回の課題論文(各1500字〜4000字程度)の提出が求められます。従って授業の準備と並行して、計画的に課題を進めていきます。学習スタイルには朝方夜型など個人差がありますが、私の場合、講義がある日は午前中講義の準備をして、午後からは課題論文に向けて学習を進めました。講義のない日は、1日中課題論文に向けて学習を進めました。できるだけ週末は休むように心がけましたが、課題提出が近づくと土日も図書館で過ごすことが多くなりました。

Q:ご家族連れで留学されましたが、大変だった点は?

A:不動産が異常な高騰を続けるシドニーで、家族で手頃な物件を探すことは困難でした。1人で留学する場合と異なり、家族連れの場合は大学が斡旋するアパートに入居することができず、自分で不動産屋をあたって部屋を探さなければなりませんでした。また、子どもの小学校と大学が離れていたことも住居探しを難しくしました。幸い手頃な物件を海岸沿いの町に見つけることができましたが、公共交通機関の便が悪く、車で片道30キロを通学しなければなりませんでした。

Q:留学先で、お子さんの様子は変化しましたか?

A:日本では一度も英語を学んだことはなかったので、初めは先生が何を話しているのか分からず苦労したようですが、少しずつ英語への抵抗が少なくなっていったようです。学校だけでなく、近所や地元のサーフクラブ、またスクールバスなどでの幅広い交友関係が、英語学習への動機付けを高めたと感じました。日本に帰ってからも英語の勉強を続けたいと言っています。

Q:留学期間を振り返って、どんな感想をお持ちですか?

A:今回の留学を通して、外国語としての英語を学ぶことや教えることについて考えを深めることができ、諸外国における英語学習や英語指導の現状を知ることができました。これまでの教職経験や人生経験が今回の留学をさらに有意義なものにしてくれた感じがします。若い時の留学に比べると、勉強以外の活動範囲が狭かったなと感じます。比較的年齢層が高く、またクラスメイトと顔を合わせる機会が少ないという大学院の特質も影響していたのかもしれません。やはり様々な経験をするためには、若い時の留学が一番だと思いました。また英語の上達についても若い時の方が早かったなと感じます。

Q:今後の展望や夢を教えてください。

A:留学先で学んだことを学校での英語教育に生かし、子どもたちに還元できればと思います。

Q:現役講師やこれから英語の先生を目指す人たちへ、アドバイスをお願いします。

A:生徒には日頃から、できるだけ正しい知識や現実を伝えることを心がけています。そのためは教師自身が常に向上心を持ち、研鑽を積む努力をすることが大切です。また教師は分かりやすく英語を教えることに加え、英語学習者としての姿を生徒に見せることも大切なことだと思います。

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