「犯罪学」の研究者になることを目標に、大学院留学を経て、PhDへ進学
参加コース:オーストラリア大学院留学
留学先:メルボルン大学
専攻:Master of Criminology
留学期間:2011年7月〜2013年6月
1988年生まれ、福岡県出身。九州大学法学部を卒業後、平和中島財団の奨学金を得て、2011年よりメルボルン大学でMaster of Criminologyを学ぶ。2013年6月に大学院を修了して帰国。2014年2月よりグリフィス大学のPhD(博士課程)へ進む予定。
刑事政策のゼミがきっかけとなり、法学から犯罪学へ専攻を変えた
卒業式用のアカデミックガウンを着て、大学の中庭にて
卒業式の会場
メルボルンのアイコンのひとつであるフリンダース駅
クイーンヴィクトリアマーケット
観光地となっている旧監獄
Q:大学院留学を決めた理由を教えてください。
A:私が専攻する「Criminology(犯罪学)」は、日本ではあまり主要ではない分野です。特に、私がやりたい実証研究という点も日本ではあまり盛んではないため、留学を決心しました。オーストラリアを留学先に選んだのは、研究テーマである「修復的司法」の研究が盛んであり、著名な研究者が数多くいるからです。 日本で大学を卒業した年の5月にオーストラリアに渡り、約2ヶ月間大学付属の語学学校に通って、7月に途中入学という形でメルボルン大学の犯罪学修士課程に入学しました。
Q:留学以前に、海外滞在経験はありましたか?
A:大学3年次の夏休みに大学主催の語学研修に参加しました。1ヶ月の研修中は、ホームステイをしながら、大学の提携校であるサンノゼ州立大学付属の語学学校に通学しました。留学を決心してからは、留学生のために英語で開講される大学の講義に参加していました。
Q:奨学金を得て留学されたそうですが、申請に必要なステップについて教えてください。
A:私の場合、まずインターネットで奨学金に関する情報収集をして、応募要件を満たすものを選択し、平和中島財団、伊藤国際交流委員会、村田海外留学奨学会の3つの奨学金に申請しました。どの奨学金の審査も書類を用意する必要があり、留学の志望動機や研究内容、自分の長所短所、そしてなぜ自分がその奨学金を受給するのにふさわしいかなどに関して指定の書類に記載することが求められます。伊藤国際交流委員会、村田海外留学奨学会の両奨学金は第1次の書類審査の段階で残念ながら落ちてしまいましたが、平和中島財団の奨学金は第1次の書類審査を無事に追加し、最終の面接にまで進みました。面接では、第1次の書類審査で提出した志望動機に基づいて複数の面接官からそれぞれ質問を15分ほど受けました。面接審査も通過し、最終的に平和中島財団から奨学金を受給できることになりました。
Q:メルボルン大学を選んだ理由は?
A:オーストラリアの大学院に進学するにあたって、一番重要視したのはプログラム内容です。学部時代、刑事政策のゼミに所属している間にCriminologyの基礎を少し学んだのですが、研究者を目指している私にとっては、基礎をしっかりと体系的に学ぶ必要がありました。その点でメルボルン大学のプログラム内容が一番適していると考えました。
Q:日本の大学では法学部専攻だったそうですが、Criminologyに専攻を変えた理由を教えてください。
A:もともと法律家を目指しており、学部時代から司法試験の勉強をしていました。しかし勉強を進める中で「本当に自分は法律家になりたいのか」と自問するようになり、今一度自分の道を考え直すため3年次のゼミ選択で前々から興味を抱いていた刑事政策のゼミを選択しました。ゼミで学ぶにつれ、その魅力に惹かれ、もっと学んでみたいと思うようになり、法学からCriminologyに専攻を変更して留学を決心するに至りました。
Q:専攻プログラムの学習内容を教えてください。
A:必修科目と選択科目に大別されますが、必修科目ではCriminologyのdisciplineで必須とされる考え方や知識を学びます。選択科目では各々の興味関心や自己に必須とされるスキルを習得するために、リサーチメソッドやインターンシップを含む多様な科目の中から目的に沿った科目を履修することができます。所属していたプログラムでは、3つ以上の必修科目を平均成績80/100以上(First Class Honours)で終えると、Minor Thesis(修士論文)なる科目を履修できることになります。
Q:クラスメイトの国籍やバックグラウンドなどを教えてください。
A:所属していたのは、おそらく30人前後というあまり大きくないプログラムです。Criminologyという専攻上、どうしてもオーストラリア特有の問題を取り上げることが多いこともあり、やはり現地学生であるオーストラリア人が多数を占め、留学生はおそらく10人前後だったと思います。知っている限りでは、アジアからはマカオ、カンボジア、シンガポール、ベトナム、ヨーロッパからはイタリア、イギリス、ギリシャ、そしてアフリカからはケニア、スーダンと非常に多様でした。彼らのバックグランドは、そのほとんどが学部生からの直接の進学で、職歴がある留学生は私が会ったことがある中では警察を休職して来ているベトナム人留学生だけでした。ちなみに多数派を占める現地学生に関してもほとんどが学部生からの直接の進学で職歴を有している学生は少数でした。私が聞いた限りではCriminologyという専攻に関しては職を得るにあたって最低でもMasterの学位を求められることが多いそうなので、そのことが影響しているのかもしれません。
Q:特に印象に残ったプロジェクトや、教授について教えてください。
A:一番印象に残っているプロジェクトは日本の修士論文にあたるMinor Thesisという科目です。まずセメスター開始前に、研究したいテーマやその方法と希望する指導教員を書いた短い研究計画書を提出。そして、成績による履修許可の審査が行われ、履修許可が下りた学生は、その研究テーマに沿って指導教員が割り振られます。セメスター開始前にはSocial Science Research SeminarというMinor Thesisを履修している学生には必修となる科目を履修します。そこでは、他の社会科学を専攻している学生と合同で、テーマの絞り込み方から論文の構成の仕方、さらにはタイムマネージメントやethics processに関する情報などについて学びます。セメスター中頃までには5000字のプロポーザルを提出します。 Minor Thesisでは12000字のものを書くことが求められます。それまで、英語でこれほど長くて一貫した文章を書いた経験がなかったので、そのプロセスは困難を伴うものでした。しかし、指導教員であるDr Julie Evansからの有益なアドバイスや温かい励ましのお言葉を受けながら、最終的には何とか満足のいく仕上がりにすることができました。このMinor Thesisを仕上げるにあたって経験した研究トピックの絞り方や実証研究の手法、そしてethics processを経た経験はPhDに進学した後に、非常に有益なものになるだろうと思います。
Q:苦労したレポートや課題はありますか?
A:留学して最初のセメスターの課題はどれも大変苦労しましたが、一番苦労したのはMinor Thesisです。PhD進学を視野に入れていた私にとって、この科目で良い成績を取る必要があり、また、PhD進学後に広げられるようなトピックを選ぶ必要がありました。なので、研究テーマの大枠として修復的司法と決めていましたが、トピックの絞り込みには大変な労力と時間がかかりました。最終的なトピックの絞り込みに至るまでには大変なストレスとプレッシャーに晒されましたが、半年ほどかけて何とかトピックを絞り込むことができました。そして、PhD出願に当たってはこのMinor Thesisで絞り込んだトピックをさらに発展させたものをもとに研究計画を作成し、出願しました。
Q:プログラムを通して身に付いたスキルや知識は?
A:Criminologyのdisciplineで必要な考え方や知識が一番。それに加えてアカデミックな文章の書き方です。これは研究者を志している私にとっては非常に役に立つものでした。メルボルン大学ではセメスター中のみならず、長期休暇中でもセミナーという形で引用の仕方を含む論文の書き方やタイムマネージメントの方法、英語が母国語ではない留学生のために大学・大学院生活で必要とされる英語のセミナーも開かれていました。また、1セメスターに1回30分で4回までindividual tutorという課題の相談に乗ってくれる制度もあり、私もよく添削のために利用しました。これらセミナーやチューター制度も併せて利用することにより、英語のスキルは留学前と比較して格段に伸びたと思います。
Q:博士課程に進学する理由を教えてください。
A:将来は研究者になりたいと思っているので、そのためにはPhDの学位が必要だからです。
Q:将来の目標やキャリアプランを教えてください。
A:目標は犯罪学の研究者になることです。メルボルン大学、オーストラリア国立大学、ニューサウスウェルズ大学、グリフィス大学の4校に出願し、4校すべての大学から入学許可のオファーを頂きました。そして、学費・生活費・保険を全てカバーする奨学金が大学から支給されることと、今後の自分の研究内容や大学の研究環境を考えてグリフィス大学のPhD(博士課程)に進学することにしました。
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