通訳・翻訳を学ぶため、マッコーリー大学院へ。
ダブルディグリーとして国際関係学を専攻
大学:マッコーリー大学
専攻:通訳・翻訳
留学期間:2010年2月〜留学中
1984年生まれ、静岡県出身。アメリカの大学で心理学を学んだ後、2010年2月よりオーストラリア・シドニー近郊にあるマッコーリー大学修士課程にて通訳・翻訳を学ぶ。ダブルディグリーとして国際関係学も同時に専攻した。
オーストラリアでは通訳・翻訳の国家資格が取得できます
大学で所属するStudent Lifeというグループで、エチオピアから届いた2000本のバラを、10本ずつの束にして駅で無料配布しました(右から2番目が私です)
Student Lifeというグループでの食事/ミーティング
ダーリング・ハーバーを友達と散歩
今年の夏休みに両親がシドニーまで遊びに来ました
1月26日はAustralia Dayというオーストラリアの建国記念日。この日はシティでいろんな催し物があります
Q:アメリカの大学から、オーストラリアの大学院に留学された動機は?
A:通訳・翻訳の勉強ができる大学院を調べていたところ、オーストラリアでは通訳・翻訳の国家資格があり、その資格取得に関連したプログラムを提供している大学が数多くあるということで、オーストラリアを選びました。
Q:マッコーリー大学院を選ばれたのはなぜでしょうか?
A:NATTI認定の通訳・翻訳コースがあったことと、それに加えダブルメジャーとしてInternational Relationsが専攻できたからです。通訳・翻訳を行う上で、いろんな分野のバックグラウンド知識は欠かせません。私はこれまで政治や経済の分野にとても弱く、興味はあったものの自分で勉強したことはありませんでした。ニュースや新聞を見ても理解できない点が多く、機会があれば大学でちゃんと勉強してみたいなと思っていました。ダブルメジャーにすることによって、通訳・翻訳の技法だけでなく、Theory of International Relations(国際関係理論)やInternational Political Economy(国際政治経済学)、またInternational Law(国際法)などの勉強もすることができます。
Q:マッコーリー大学大学院の通訳・翻訳の特徴は?
A:理論と実践の両方を重視しているのが魅力だと思います。通訳・翻訳ではもちろん、いかに良いパフォーマンスができるようにするかのためのプラクティカルな実践が不可欠ですが、それに平行して関連する理論を学べることも、実践を行う上での大きな助けになると思います。
Q:周囲の学生には、どんな人がいますか?
A:通訳・翻訳のコースでは、中国・韓国・フランス・スペイン語のストリームがあるので、それぞれの国から学生さんが集まっています。年齢的には大学を出てそのまま来たか、もしくは数年働いてから来たというような、若い方が多いように思います。言語にどっぷり浸かっているコースなので、元英語の先生という生徒がよくいます。日本人のクラスメイトでも元予備校の英語の先生という方がいます。
国際関係学のコースでは100ヶ国以上から学生が集まっているため、本当にいろんな人に出会います。ひとつのtutorialのクラスを例に挙げれば、約15人のクラスメイトの中に、メキシコ人、エクアドル人、ドイツ人、タイ人、中国人、フランス人、オーストラリア人、日本人がいます。年齢層的には通訳・翻訳に比べてやや広めです。
Q:通訳・翻訳のプログラムでは、具体的にどんな勉強をするのでしょうか?
A:通訳のクラスではNATTIの資格試験に向け、Sight Translation(サイトラ), Consecutive Interpreting(逐次通訳), Dialogue Interpreting(ダイヤログの通訳)を分けて練習します。どれも日⇔英の両方向で、学内にある通訳練習用の教室で実際に機器を使用しながら行います。トピックはビジネス・テクノロジー・環境・教育・政治・移民・国際関係・福祉・医療・法律など、広範囲に渡っています。
翻訳のクラスでは毎週課題が与えられます。授業では前の週の課題について、ディスカッション形式で難しかった点や工夫を凝らした点などについて話し合います。元のテキストは同じなのに、人によって訳し方は本当にさまざまで、他の人がどういった理由でその表現方法を選んだのかというのを知れるのは、本当に良い勉強になります。
Q:プログラムの中で、どんな科目を選択しましたか?
A:通訳・翻訳ではNATTIの試験に直結するクラスの他に、Community Interpreting(コミュニティ通訳)、Discourse Analysis(談話分析)のクラスなどを取りました。Community Interpretingのクラスでは、毎回違うエリアから通訳者の方が来て、体験談を交えながら講義をして下さいました。
International Relationsでは、Theory of International Relations(国際関係理論)、International Law and Institutions(国際法と国際機関)、International Politics and Economics of East Asia and the Pacific(東アジア・太平洋地域の国際政治経済)を取っています。
Q:印象に残っている科目は?
A:前述したCommunity Interpretingのクラスは今でもよく印象に残っています。毎回違うエリアの通訳者の方が講義をしてくださいます。例えば、トピックが医療の週は、Health Care Interpreter Serviceという機関からコーディネーターの方がいらっしゃいました。講義の後には、その週のリーディング課題に基づいて、担当の生徒たちがロールプレイを行います。そのロールプレイを通し、現場で起こりうる問題や、それをどのように解決・対処するかなどのディスカッションを行います。生徒だけではあまり意見が出ない場合や、もっと良い対応方法などがある場合は、そのゲストスピーカーの方が助言してくれます。
Q:リサーチや課題で印象的だった内容を教えて下さい。
A:最初のセメスターに履修する必修科目の一つにPublic Speakingというクラスがあり、毎回ひとりひとり実際にクラスメイトの前に立ってスピーチを行います。このクラスの最後の課題が「世界の大統領に立候補するための演説」というもので、内容を考えるのにちょっと苦労したのを覚えています。聞き手を惹きつけるため、ジェスチャーやユーモアを加えたりと、準備やリハーサルにはかなり時間がかかりました。他のクラスではこういう課題は出ないので、楽しみながらできました。
Q:特に印象的な先生はいますか?
A:マッコーリーのlecturerではないですが、通訳の授業でセミナーを担当して下さった会議通訳者の方がとても印象的でした。日本人の女性で、シドニーの通訳市場を切り開いてきた方の一人です。いかに正確でわかりやすい通訳をするか、という点に毎回焦点を当て、3つのことを常に頭に入れておくようアドバイスを頂きました。1つ目は大きな流れを理解すること、2つ目は、会議の目的・スピーカーの意図を把握すること、3つ目は、表現力・言葉の貯金を増やすことです。どれも当たり前に聞こえますが、本当に大切なことで、練習を通してどれが欠けても良いパフォーマンスはできないなと感じました。彼女の仕事に対する真っすぐな姿勢にもすごく憧れましたし、日本を遠く離れたところで活躍されている姿にも本当にパワーをもらいました。私は日本語でさえ表現力に乏しいので、授業のあとは落ち込むことがよくあります。でも、この方の授業を通して、自分にできることから少しずつ頑張っていこうと自然に思えました。
Q:通訳・翻訳を学ぶうえで、オーストラリアを選択してよかったと思う点を教えて下さい。
A:国家資格の取得を目指して勉強できる点です。努力した結果が資格として残れば、自信にも繋がると思います。また、いろんな英語に触れられる点もメリットだと思います。日本で教わる英語は、発音やスペリングなど全てアメリカ英語だと思います。それに加え、私は4年間アメリカで勉強したので、英語と言えばアメリカ英語でした。
オーストラリアではもちろんオーストラリア英語です。ニュースを聞くとよくわかるんですが、最初はかなり発音の違いに戸惑います。スペリングも多少異なる点がありますし、使う単語/表現もかなり違います。そういった点からは、もう一つの英語のバリエーションを習得できると思います。オーストラリアは移民の国なので、英語を第2言語として話している人たちが大勢います。実際に通訳を行う際、その方たちの話す英語がネイティブの英語でないことは十分にあり得ることなので、それを考えれば日々いろんなバックグラウンドの人たちが話す英語に触れられるのは、とてもアドバンテージだと思います。
Q:アメリカの大学と大きく異なると感じた点はどんなことですか?
A:Tutorialというクラスが加わったことです。アメリカではlectureだけだったんですが、オーストラリアではlectureのあとにtutorialという、小さなグループに分かれて、その日lectureで学んだ内容をさらに掘り下げて学ぶ機会があります。これにより、ディスカッションをする機会がかなり増えました。
Q:学業以外ではどのように現地での生活を楽しんでいますか?
A:勉強に直結してますが、日曜日にはChatswood(チャツウッド)というところにあるNorthshore Christian Centreという教会でメッセージ通訳をしています。私の役割は、牧師先生が英語でされるメッセージを、数名の日本人向けに、日本語に通訳することです。この教会には通訳用の機材が揃っているので、私にとっては学校で学んだものを実際に活かせる、本当に感謝すべき機会です。
Q:生活の面では、アメリカとオーストラリアの違いを感じましたか?
A:テキサスにいた時は、車がないとどこにも行けないようなところに住んでいたのですが、シドニーでは電車が通っているせいか、行動範囲が広いように感じます。物価はシドニーの方がはるかに高いです。生活費を考えると、テキサスの方が良心的でした。ただオーストラリアの場合は、学生ビザで週20時間までの労働が許されているので、働こうと思えば働けます。アメリカの時は、キャンパス外での労働はビザの条件的に認められていませんでした。
Q:現時点で振り返って、大学院留学は原さんの人生にとってどんな時間だと思いますか?
A:本当に充実した毎日だと感じています。大学院ですので、勉強する内容の専門度はより高く、求められる基準も高いです。今2つの専攻を同時進行でやってますが、通訳・翻訳では、練習したらその分だけ必ず自分に返ってきます。授業では上手くいかないことも多々ありますが、そのミスも無駄になることはなく、そこから学んだものが次のパフォーマンスに繋がります。
国際関係学の方では、世界中から集まる学生たちと一緒に、今まさに起こっている国際問題についてディスカッションができるという、ここに来る前は考えもしなかった機会が与えられています。Tutorialのクラスでは、自分の国を代表して意見を述べるような場面も多いので、おのずと日本のこともよく調べるようになりました。クラスメイトたちの意見には、良い意味で驚かされることが多いです。同じ出来事に対しても、国が違えば捉え方も違うので、これまで知らなかった面がたくさん見えてきました。
Q:卒業後のキャリアの展望をお聞かせください。
A:もともと通訳・翻訳関係の仕事がしたくてこの専攻を選んだので、今後もそれを目指していく予定です。卒業後にこちらに残るか日本に戻るかはまだわかりませんが、どちらにしても、今学んでいることをいかせればと思っています。
Q:オーストラリアの修士留学を検討中の皆さんに、メッセージをお願いします。
A:どの分野であっても、自分の視野を広げて多くのものを吸収できる、本当に素晴らしい機会になります。どれも日本ではなかなか経験できないものですので、ぜひ実現してほしいと思います。やり遂げた時には、それが大きな自信に繋がります。捕捉ですが、オーストラリアはとても親日ですので、日本人としては生活しやすい環境だと思います。
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