公衆衛生学(Public Health)は主に大学院課程において学ぶことができる専攻で、地域や国、あるいは世界的規模で抱える健康に関する課題をどのように解決するか、また人々が健康を保つためにどのような環境や施策を整えるべきなのかなどについても考える学問です。そのため、公衆衛生は行政への提言のもとになったり、制度の見直しやガイドラインの指針の一つになるなど社会に与える様々な影響を持つ学問でもあります。
今回は公衆衛生学専攻が学べる、オーストラリア国内で人気の3大学をご紹介します。
シドニー大学(University of Sydney, Master of Public Health)
公衆衛生の分野で、ICCから最も多くの学生さんが進学しているのがシドニー大学です。同大学の特徴としては
- 1.5年間で修士課程が修了できる
- 学部での専攻は、以下の通り理系に限らず、文系学部出身の方でも入学が可能。
(健康科学、医学、薬学、看護学、理学療法、歯学、獣医学などの医療関連分野をはじめ、教育、コミュニケーション、人文学、社会学、政治学、国際関係、工学、建築、法律、経済、商業、マーケティングなど) - 2024年ShanghaiRankings Global Rankings of Academic Subjects では、公衆衛生学分野で世界10位と高い評価を得ている
などが上げられます。
しかしシドニー大学の公衆衛生学の魅力はそれだけにとどまらず、以下の様な特徴があげられます。
履修できる多彩な科目群
公衆衛生学を学ぶ中で、履修できる科目は実に60科目以上。中には、タバコが健康に及ぼす影響や気候変動がいかに健康を左右するかなども学べる科目も整っています。
これらの科目群は
- 慢性疾患予防
- 伝染病管理
- 健康促進と提言
- リサーチメソッド
など4つの専門分野を選ぶことで、それぞれの専門性に沿って科目を履修することとなります。
Generalist(公衆衛生学全般)専攻で幅広く学べる
専門性が高められる一方で、様々な内容を横断的に学ぶ事ができるのもシドニー大学の公衆衛生学専攻の魅力。幅広い知識を身につけたいと言う方にも最適です。
また選択科目では必ずしも公衆衛生の分野に限定されるわけでは無く、専門分野以外からも履修が可能な科目があります。
リサーチメソッドを学び、研究職を目指す
専門分野の一つに挙げられるリサーチメソッドでは、基礎となる公衆衛生について学んだ上で、定性分析や統計モデルなど、研究を進める上で必要なデータの適切な集め方や分析方法などを学ぶ事ができます。
コースワークとして学びながら、論文執筆も単位取得の一環として求められるため、その後の研究職への足がかりとなります。
前述の通り、ICCからも多くの方が進学をした同大学の公衆衛生学ですが、それまでの経歴も医師、看護師の他、栄養士や公的機関に勤務されていた方など様々な方がいらっしゃいました。
メルボルン大学(University of Melbourne, Master of Public Health)
シドニー大学と並んで、人気があるのがメルボルン大学の公衆衛生学です。
こちらの大学の特徴は
- 2年間で修士課程を修了。但し、それまでの経歴により、3ヶ月〜半年分の単位として認定頂き、学習期間を短縮ができる
- 学部での専攻は、不問(ただし、これまでICCから入学されている方は理系または医療系に関連した経歴をお持ちの方がほとんどでした)
- 2024年ShanghaiRankings Global Rankings of Academic Subjects では、公衆衛生学分野で世界25位と高い評価を得ている
などが上げられます。
こうした高い評価の裏付けとなるのが、以下の特徴です。
選べる11の専門分野
- Epidemiology & Biostatistics:疫学と生物統計学
- Evaluation and Implementation Science:評価と実装科学
- Health, Gender, Society:健康、性と社会
- Global Health:グローバルヘルス
- Gerontology:老年学
- Health Economics & Economic Evaluation:医療経済学と経済評価
- Health Policy, Systems and Practice:健康政策と仕組み及び制度
- Indigenous Health:先住民の健康
- Infectious Disease Epidemiology:感染症の疫学
- Sexual Health:性と健康
- Climate, Environment and Health.:気候、環境と健康
中でも、他の大学と比べ、女性(性別)に関する健康学が学べるのが特徴的です。
キャップストーン(Capstone)での実践力強化
メルボルンでのカリキュラムの特徴の一つでもあるCapstone。このカリキュラム内で、自身で選んだトピックを元に研究活動を行ったり、あるいは関連機関などでプロジェクトに参加することで学んだ内容をさらに実践的に応用できる力を身につけます。
選択推奨科目など、専門性を高めるカリキュラム構成
前述の専門分野以外で、選択科目(Electives)として学べる科目も充実していますが、大学から「推奨選択科目」として履修を推奨されている科目などもあり、総合的に「公衆衛生」に関する基礎知識と専門知識をバランス良く身につけることができる構成になっています。
前述の11の専門分野で特に学びたい専門性がある方には最適なコースと言えるでしょう。
ニューサウスウェールズ大学(University of New South Wales Master of Public Health)
メルボルン大学やシドニー大学では公衆衛生学を学ぶ場合、Master of Public Healthで学ぶのが一般的ですが、ニューサウスウェールズ大学にはMaster of Public health以外に、少し異なる角度から公衆衛生学を学ぶことができるMaster of Global Healthという専攻があります。
こちらの大学の特徴は
- 1年間で修士課程を修了。
- コース開始時期が2月、6月、9月の年に3回ある
- 短期間で修士課程が修了するため、学部課程および修士課程で公衆衛生または健康関連の専攻を卒業していること、または学部課程で公衆衛生または健康関連の専攻を卒業していることおよび2年以上の職歴/ボランティア経験が入学条件として定められています。
などです。
Master of Public Healthで学ぶ場合と比較して、Master of Global Healthでは国際的な健康問題やグローバルな視点からの公衆衛生に重点を置いています。異なる文化や国々における健康課題や国際保健政策、グローバルな疾病管理など、世界的な視野での公衆衛生の理解を深めたい方には最適です。
特徴的な科目設定
これまでご紹介したメルボルン大学やシドニー大学と比べ、ニューサウスウェールズ大学のMaster of Global Healthで学べる専門分野はInfectious Diseases Control(感染症管理)の1つだけ。ただし、この専門分野の中で、「予防接種に関する制度、政策」や「グローバルヘルスにおける伝染病管理」など同大学のコースならではの科目群が揃っている。
中でも、新型コロナウイルスやエボラ出血熱、MERSなど近年の爆発的な感染を起こした症例を元に、感染拡大の調査や変異種の特定など様々な角度から学ぶ「Outbreak Investigation and Intelligence」と言った科目がある。
この科目はKings College Londonとアリゾナ州立大学とUNSWの共同授業として実施されており、国の枠組みを超えた学びができるのが特徴でもある。
特徴的なカリキュラム構成
UNSWのMaster of Global healthでは、公衆衛生学を基盤としながら、多岐にわたる以下のテーマを扱い、グローバルヘルスについてより深く探求できるようカリキュラムが組まれています。
- 疾病管理
- グローバルヘルスシステムの比較分析
- 健康促進
- 多様な地域や国々における健康政策
さらに、このプログラムでは、グローバルヘルスにおける政治や倫理などとの関連生についても学ぶことができます。例えば、グロバライゼーションに伴う健康の変化や、健康と人権、環境問題、人口増加の問題にまつわる公衆衛生などについて考えます。これら現代の複雑な健康課題を多角的に理解し、解決するための視点を養うことができるように学びを進めていきます。
専門性を高めるダブルディグリー
UNSWのMaster of Global Healthは1年間で修了できるコースですが、より専門性を高めたり、また汎用性を広げるために別の修士課程(マスター)と合わせて学び、ダブルディグリーとして1.7年程度で2つの学位を取得することも可能です。
ダブルディグリーで学べるコース
- Master of Global Health and Master of Public Health
- Master of Global health and Maste of Health Leadership and Management
- Master of Global Health and Master of Infectious Diseases Intelligence
他にもある!お勧めの大学
オーストラリアは公衆衛生の分野において、理論はもちろんのこと、以下に実践社会で活用できるかなど幅広く学べる点が魅力でもあります。
今回は人気の高い3大学をご紹介しましたが、他にもクイーンズランド大学やグリフィス大学のように特徴を兼ね備えた大学も多数あります。
それぞれの方が希望する学習内容、あるいはその後のキャリアにも焦点を当てつつ、どの大学で学ぶ事が有益なのかなどを個別にご相談対応しております。
ご興味のある方はいつでもICCにご相談ください。