公衆衛生学(Public Health)は主に大学院課程において学ぶことができる専攻で、地域や国、あるいは世界的規模で抱える健康に関する課題をどのように解決するか、また人々が健康を保つためにどのような環境や施策を整えるべきなのかなどについても考える学問です。そのため、公衆衛生は行政への提言のもとになったり、制度の見直しやガイドラインの指針の一つになるなど社会に与える様々な影響を持つ学問でもあります。
今回は公衆衛生学専攻が学べる、オーストラリア国内で人気の3大学をご紹介します。
シドニー大学(University of Sydney, Master of Public Health)
公衆衛生の分野で、ICCから最も多くの学生さんが進学しているのがシドニー大学です。同大学の特徴としては
- 1.5年間で修士課程が修了できる
- 学部での専攻は、以下の通り理系に限らず、文系学部出身の方でも入学が可能。
(健康科学、医学、薬学、看護学、理学療法、歯学、獣医学などの医療関連分野をはじめ、教育、コミュニケーション、人文学、社会学、政治学、国際関係、工学、建築、法律、経済、商業、マーケティングなど) - 2020年の世界ランキングでは、公衆衛生学分野で35位と高い評価を得ている
などが上げられます。
しかしシドニー大学の公衆衛生学の魅力はそれだけにとどまらず、以下の様な特徴があげられます。
履修できる多彩な科目群
公衆衛生学を学ぶ中で、履修できる科目は実に60科目以上。中には、タバコが健康に及ぼす影響や気候変動がいかに健康を左右するかなども学べる科目も整っています。
これらの科目群は
- 慢性疾患予防
- 伝染病管理
- 健康促進と提言
- リサーチメソッド
など4つの専門分野を選ぶことで、それぞれの専門性に沿って科目を履修することとなります。
Generalist(公衆衛生学全般)専攻で幅広く学べる
専門性が高められる一方で、様々な内容を横断的に学ぶ事ができるのもシドニー大学の公衆衛生学専攻の魅力。幅広い知識を身につけたいと言う方にも最適です。
また選択科目では必ずしも公衆衛生の分野に限定されるわけでは無く、専門分野以外からも履修が可能な科目があります。
リサーチメソッドを学び、研究職を目指す
専門分野の一つに挙げられるリサーチメソッドでは、基礎となる公衆衛生について学んだ上で、定性分析や統計モデルなど、研究を進める上で必要なデータの適切な集め方や分析方法などを学ぶ事ができます。
コースワークとして学びながら、論文執筆も単位取得の一環として求められるため、その後の研究職への足がかりとなります。
前述の通り、ICCからも多くの方が進学をした同大学の公衆衛生学ですが、それまでの経歴も医師、看護師の他、栄養士や公的機関に勤務されていた方など様々な方がいらっしゃいました。
メルボルン大学(University of Melbourne, Master of Public Health)
シドニー大学と並んで、人気があるのがメルボルン大学の公衆衛生学です。
こちらの大学の特徴は
- 2年間で修士課程を修了。但し、それまでの経歴により、3ヶ月〜半年分の単位として認定頂き、学習期間を短縮ができる
- 学部での専攻は、不問(ただし、これまでICCから入学されている方は理系または医療系に関連した経歴をお持ちの方がほとんどでした)
- 2020年の世界ランキングでは、公衆衛生学分野で17位と非常に高く評価されている
などが上げられます。
こうした高い評価の裏付けとなるのが、以下の特徴です。
選べる10の専門分野
- Epidemiology & Biostatistics:疫学と生物統計学
- Evaluation and Implementation Science:評価と実装科学
- Gender and Women’s Health:性と女性の健康
- Global Health:グローバルヘルス
- Health and Society:健康と社会
- Health Economics & Economic Evaluation:医療経済学と経済評価
- Health Policy, Systems and Practice:健康政策と仕組み及び制度
- Indigenous Health:先住民の健康
- Infectious Disease Epidemiology:感染症の疫学
- Sexual Health:性と健康
中でも、他の大学と比べ、女性(性別)に関する健康学が学べるのが特徴的です。
キャップストーン(Capstone)での実践力強化
メルボルンでのカリキュラムの特徴の一つでもあるCapstone。このカリキュラム内で、自身で選んだトピックを元に研究活動を行ったり、あるいは関連機関などでプロジェクトに参加することで学んだ内容をさらに実践的に応用できる力を身につけます。
選択推奨科目など、専門性を高めるカリキュラム構成
前述の専門分野以外で、選択科目(Electives)として学べる科目も充実していますが、大学から「推奨選択科目」として履修を推奨されている科目などもあり、総合的に「公衆衛生」に関する基礎知識と専門知識をバランス良く身につけることができる構成になっています。
前述の10の専門分野で特に学びたい専門性がある方には最適なコースと言えるでしょう。
ニューサウスウェールズ大学(Univesity of New South Wales, Master of Global Health)
今回ご紹介している公衆衛生学の中で、最もコースとして新しく設定されたコースがUNSWのMaster of Global Health。
実はそれまでMaster of International Public Healthという名称で運営されていたコースが2021年から新たに名称やカリキュラムを変更し誕生しました。
こちらの大学の特徴は
- 1年間で修士課程を修了。
- コース開始時期が2月、6月、9月の年に3回ある
- 短期間で修士課程が修了するため、学部での専攻は、公衆衛生または健康関連の専攻を学んで来ており、かつ2年以上の関連職歴を持っていること。
などです。
UNSWの公衆衛生学はGlobal Healthというその名の通り、主専攻として学べる感染症学や疫学などにおいても、常に一つの国の中での政策や制度にとらわれず、国境を越え、世界規模でどのように統制すべきか?を学ぶ専攻となっています。そのため、以下の様な特徴も持ち合わせています。
特徴的な科目設定
これまでご紹介したメルボルン大学やシドニー大学と比べ、ニューサウスウェールズ大学のMaster of Global Healthで学べる専門分野はInfectious Diseases Control(感染症管理)の1つだけ。ただし、この専門分野の中で、「予防接種に関する制度、政策」や「グローバルヘルスにおける伝染病管理」など同大学のコースならではの科目群が揃っている。
中でも、新型コロナウイルスやエボラ出血熱、MERSなど近年の爆発的な感染を起こした症例を元に、感染拡大の調査や変異種の特定など様々な角度から学ぶ「Outbreak Investigation and Intelligence」と言った科目がある。
この科目はKings College Londonとアリゾナ州立大学とUNSWの共同授業として実施されており、国の枠組みを超えた学びができるのが特徴でもある。
留学生向けの大学院準備科目
Academic Practiceと呼ばれる、大学院課程で学ぶ留学生(英語が母国語ではない学生)向けの科目。この科目では、各自が学んでいる科目の読解や記述方法などについてわからない所があった場合に質問したり、しっかり授業について行けるよう、最初の学期に履修することで大学院での学びをスムーズにするように設定されている。 授業料は不要で、また卒業の単位数に組み込まれることもないが、この科目のおかげで、授業内容の理解が進んだり、つまづくこと無く学位取得に繋がったと評価する学生も多い。
インターンシップ経験が単位の一部に
健康科学系の専攻では珍しく、インターンシップが単位の一部として認定されており、およそ6週間程度、関連する機関での実地体験をする事で、学んだことを以下に実社会で活かせるかという自身の能力を発揮したり、それらの活動に対しての評価、フィードバックなどを得る事もできる。
他にもある!お勧めの大学
オーストラリアは公衆衛生の分野において、理論はもちろんのこと、以下に実践社会で活用できるかなど幅広く学べる点が魅力でもあります。
今回は人気の高い3大学をご紹介しましたが、他にもクイーンズランド大学やグリフィス大学のように特徴を兼ね備えた大学も多数あります。
それぞれの方が希望する学習内容、あるいはその後のキャリアにも焦点を当てつつ、どの大学で学ぶ事が有益なのかなどを個別にご相談対応しております。
ご興味のある方はいつでもICCにご相談ください。