IBP留学コラム

貸付型クラウドファンディングで資産運用と社会貢献を両立 クラウドクレジット株式会社 CFO坂本 隆宣さん
貸付型クラウドファンディングで資産運用と社会貢献を両立 クラウドクレジット株式会社 CFO坂本 隆宣さん

資産運用が、世界経済の発展へ

クラウドクレジットは「より魅力的な運用先を探す国とより安定的な投資資金を探す国を結びつけること」をミッションに掲げ、ソーシャルレンディング(注1)事業を展開しています。主に新興国で事業を展開している金融機関や事業者に貸し付けを行っており、国内のみならず世界でも事例の少ないビジネスモデルです。クラウドクレジットでCFOを務める坂本隆宣さんはICCコンサルタンツが運営するIBPビジネス留学(注2)の修了生です。留学後、M&Aを軸として金融業界で様々なグローバルキャリアをもつ坂本さんの人生軸・キャリア観、そしてこれから目指すキャリアについて、お話しを伺いました。

注1)ソーシャルレンディング:インターネット上で『お金を借りたい人、企業』と『お金を貸したい人、企業』を結びつける融資仲介サービス。貸付型クラウドファンディングと呼ばれる投資手法の一つ。

注2)株式会社ICCコンサルタンツが主催運営する大学での学びと海外企業でのインターンシップを組み合わせた1年間の留学プログラム。1989年に1期生を送り出して以来、延べ5000名の卒業生を輩出している。

坂本 隆宣/Takanobu Sakamoto

2005年に早稲田大学政治経済学部政治学科卒業後、大和証券SMBCに入社。主にクロスボーダーM&Aアドバイザリー業務に従事する。その後ドイツ証券にてキャリアを積み、Greenhill Japanにて日本法人立ち上げに携わり、主にクロスボーダーM&Aアドバイザリー業務に従事。
2013年 実家にて農業に従事した後、三菱UFJリサーチ&コンサルティングに入社。財務アドバイザリー業務(M&Aアドバイザリー、各種資本政策・組織再編のコンサルティング)を立ち上げ。
2017年 杉山CEOと再会を果たし、ビジネスモデルに惚れてクラウドクレジットへ入社。

世界を繋ぐ、クラウドクレジットの扱うファンドの魅力とは

クラウドクレジットのファンドの魅力の1つは資産運用の王道(株や投資信託)とはリスクリターンが異なるオルタナティブ投資の特徴を持つことで、投資経験者にとっては資産ポートフォリオ拡充の有力な選択肢となります。2つ目は社会的インパクト投資を通して海外の方々を支援できることで、顧客層のうち2割くらいが未経験者(投資初心者)の方ですが、その割合が増えてきています。寄付ですとお金は無くなってしまいますが、あくまで資産運用ですので、投資を通してリターンを得つつ(リスクもありますが)社会貢献できるというところでやってみようかな、と踏み出す方が多い印象です。また、社会的インパクト投資そのものを提供している企業は日本にまだ少なく、株だと大企業への投資なので、具体的にどのような使われた方をしているのかなかなか見えにくいのですが、受益者の表情が見えるようになっていることも魅力として考えられます。なお、CFOとして会社のステージに合わせて、しかるべきパートナーを選んでそこから資金調達をして事業を伸ばしていくことが私の主な業務の1つとなります。

M&Aに興味をもったきっかけは留学時代の経験

2003年、就職氷河期だったこともあって、大学のプログラムだと就職を見据えたときにあまり直結しないと感じて、たまたまIBPを見つけたんですよね。元々留学前はグローバルに活躍しているメーカー志望でしたが、アメリカと日本を比べた時に一番差がついているのが金融業界だったので、IBPでは金融でインターンをしてやってみたらすごく面白かったですね。 留学中に日本人サークルを立ち上げて、はじめは日本人だけだったサークルをどんどん他のエスニックサークルと統合していき最終的に100人ほどのサークルになった経験がすごく面白くて、似たような仕事がないかと探したときにM&Aに繋がりました。異なる文化がぶつかりあって融合することが楽しかった、ということが、原体験としてありましたね。 ただそれは学生の考え方で、仕事としてM&Aを実際にやるとすごく辛くて(笑)、そこのギャップは就職後、大和証券SMBCでの最初の1・2年は感じていました。

次のステップを目指し外資系投資銀行へ

入社後3年目くらいで個人賞をとった時にジュニアバンカーとしてのラーニングカーブをさらに上げたいという気持ちがあったので、転職を考えました。当時はリーマンショックでタイミングとしては最悪でほとんどポストがなかったのですが、外銀に転職し、そちらではプライベートエクイティ向けのM&Aアドバイザリー業務に従事させて頂きました。その後、米国を中心に展開しているGreenhillというM&A専門の投資銀行が日本拠点を立ち上げるというお話があり知り合い経由でお声がけ頂きまして、同社の日本法人の立ち上げメンバーとして入社することになりました。

ゼロから立ち上げる楽しさに改めて気づいたGreenhill時代

キャリアとしては8年くらい日系証券と外銀でM&Aを経験しましたが、それ以外に、組織をゼロから立ち上げるというところがすごく楽しくて、Greenhill以降のキャリアはそちら中心になっています。立ち上げの魅力は、過去の経験が通じる部分と通じない部分が両方あるところですかね。通じる部分がハマってうまくいけばもちろん嬉しいし、どうやったらいいか分からない部分については試行錯誤して、最終的に成果を出せたときはさらに嬉しいですね。留学中に日本人サークルを立ち上げたことが原体験になっていると思います。

実家で農業、そして新たなステージへ

Greenhillの日本法人立ち上げはうまくいっていましたが、2013年頃に父が体調を崩しました。これまでの恩返しをしたいという想いと家族との時間も大事にしたいと思ったこともあり、しばらく実家で農業を手伝うことに決めました。 農作物の作付面積を縮小したり、作物も収穫しやすいものに変えて自分がいなくなっても上手く農業が回るようにした後、落ち着いたタイミングで東京に戻ることを決意しました。 

これまでの経験を活かしたい気持ちはあったので、一応投資銀行は受けまして、内定はいくつか頂きました。それだと結局元のキャリアトラックに戻るだけで面白くないな、と思ったんですよね。少し違うアングルでまた立ち上げをしたいなと思い、三菱UFJリサーチ&コンサルティングに入社を決め、財務アドバイザリーの部署を立ち上げるという業務を行いました。ここでも過去の経験が活きまして、元々小さなチームだったのが正式な部署になるくらい成果を出せました。組織が大きくなって安定してきたので私の役割もそろそろ終わりで、一方で、3年おきくらいに短距離走を繰り返している感じのキャリアではなくもうちょっと大きなことに長い時間軸で取り組みたいと思いはじめたタイミングに、クラウドクレジットのCEOが大和証券SMBC時代の同期だったのでたまたま再会し、声をかけてもらって入社したという流れですね。

今の仕事へ向き合う姿勢の原点はGreenhillでの経験

CFOというポジションでも自分でできることは何でもやる、という姿勢の原体験としてGreenhillに入社したときにネットとPCしかなかった中で管理部門に関わる仕事もこなしましたし、日本では知名度がほぼ無い中で積極的に営業して仕事を取ってきた経験が大きく影響していると思います。大手だと役割分担がされているので、スタートアップのベンチャーだと大手では経験できない部分もすごくある。 CFOとしてお仕事をしていますが、Financeの仕事だけではなく、営業もしています。普通のCFOって財務管理をしているイメージだと思うんですけど、攻めに回っていますね(笑)当社はベンチャーキャピタルに加え、マネックス・伊藤忠商事・三菱UFJ・第一生命・SBI・ヤフー!・ソニーフィナンシャル・LINE・丸井など大手企業を株主様として迎えており、株主様とうまくシナジー(相乗効果)を出していくことが求められているため、その責務を果たすためならCFOという枠にはとらわれずに何でもやるというのが基本スタンスです。

海外経験を通して肌で感じたことを帰国後も忘れないこと

留学していた1年間はすごく貴重で自分にとっても留学が転機になっていますし、仕事を海外でしていた時期もあるのでやはり海外でいた時間って濃いですよね。 僕は昔からアウトゴーイングでしたけど、留学に行ってさらにはじけたなというところがありますね。留学に行けば多かれ少なかれ、人種とか言語とかはあまり関係なくて、自分がやりたいと思ったことや自分がやれることをやっていかないと何も価値を生み出せないということが肌でわかると思います。とにかく時間が限られているので、やれることは全部やろうと思っていましたね。インターンも複数やったり、言葉が満足に話せないのは当たり前なので気合いで突破するみたいな感じでした。 

留学中って英語の環境だし異文化なので放っておいてもインプットできるので、日本に戻ってきてからのほうが気を遣っていました。今も続けていることではありますが、英語力を落とさないように毎日ラジオで英語を聞いたり、意識的に外国人と話したりしていましたね。 僕の場合はラッキーで、ファーストキャリアがクロスボーダーの業務で英語を使う機会があったので良かったですけど、戻ってきてから留学で学んだことをどれだけ維持して発展できるかって個人の意識によると思うので、そこをサポートできるものがあればいいかなとも思いますね。 

人生の選択の中で大切にしている軸は楽しいか、ワクワクできるか

仕事って一日の大半過ごすものなので、楽しいかどうか、ということは考えて選択しています。お金も大事だと思いますけど、自分の一回の人生の中で自分が一番エキサイトメントが得られるものかどうかで選んでいますかね。 

ゼロから1を生み出す仕事であっても、そこで使うスキル自体はポータブルなんですよね。今の仕事でも英語や財務・会計のスキルは使いますし、そこはキャリアを選ぶときに何がポータブルで、何がポータブルじゃないのか、という部分はちゃんと選んで身に着けていかないと、キャリアとしては詰まりそうな気がしますね。軸として、資本政策がらみのことと、スタートアップみたいなことを大きな組織の中でもやっているのでその2点はブレていないと思います。

ファーストキャリア時代は想像していなかった現在

M&Aが好きだったので、好きという気持ちだけでどこまでいけるかという気持ちもありましたし、スタートアップにいくということは新卒当時は全く考えていなかったですね。大手の方が居心地もいいし安定もするんでしょうけど、転職してしまえばやるしかないので、今も後悔しないように一生懸命頑張って結果は出しているかな、と思いますね。 

面白いことを続けていきたい

今回スタートアップに転職して思ったのは、大企業内の新事業や組織立ち上げとは異なり、事業そのものが新しいのでその分大変だけどやりがいはあるということですね。先ほど申し上げた「過去の経験が通じる部分」「通じない部分」で言うと、「通じない部分」のほうがはるかに多いのですが、考え抜いてそれを乗り越えていくことが面白いと感じています。あと、年齢はあまり気にしていなくて、チャレンジできる時に面白いと思うことにチャレンジするようなキャリアを続けられればいいかなあと思っています。 

これからの時代を自分らしく生きる、自分軸の持ち方

確かにファーストキャリアは大事で、初めて入った会社で同期から受ける刺激やそこで学ぶことってある程度後々の人生に影響を与えると思うんですけど、僕らが学生だった時より今は流動性というか転職のしやすさは増していますし、一回スタートアップを経験したからといって、大企業に戻れないってことでもなくなっていると思うので、そこに関しては今の就活生は柔軟に考えてもいいのかなと思いますね。 留学に行けば、自分の殻に閉じこもっていたら何も生まれないということが分かると思うので、そのマインドセットでずっと働きたいかどうかと、新卒で入った会社がそのスタンスや考え方を受け入れてくれるかどうかだと思います。 自分がやらなきゃいけない範囲が決まっていてそこで満足するか、その範囲を飛び越えてワクワクを求めていくかどうかですね。

取材後記

坂本さんへキャリア観・人生観をお伺いし、「自分軸」をもって生きること、選択することの重要性や意義を感じることができました。海外に中々出ることができない今、日本国内にいてもグローバル人材とは何かと考えたときに、この軸を意識することは非常に重要となってくるのではないでしょうか。CFOとしてご活躍されている坂本さんのお仕事と向き合われている姿勢から学ぶことは多く、またご自身の軸を持った生き方や考え方がその素敵なお人柄にも直結しているのだと感じました。坂本さん、本当にありがとうございました!次回は、坂本さんがCFOを務めるクラウドクレジットさんの事業内容にフォーカスしたSDGs企画をお楽しみに! 

Author:大久保 芙美
株式会社ICCコンサルタンツ ビジネス留学・研修事業部
JAOS認定 留学カウンセラー

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