全世界で急激に拡大した新型コロナウイルス感染症。多くの留学生が日本国への帰国を余儀なくされ大きな影響を受けました。しかし、周りの友人が母国に帰っていく一方で、現地に留まることを選び現在も留学というチャレンジを続けている方もいます。
今回はアメリカ・シアトルのワシントン大学に留学中の和田さんと、サンフランシスコ州立大学に留学中の溝口さんに緊急インタビューを実施。 ロックダウンが続く異国の地で今、彼らはどのようなことを考え、いったいどのような大学生活を過ごしているのでしょうか。また、今まさに感染拡大と戦う日本を外から見ることで、どのような気づきを得たのでしょうか。
最初はきつかった自粛生活
まずは簡単に自己紹介をお願いします。
和田さん「IBPビジネス留学(注1)の61期生で、2019年秋出発でアメリカシアトルのワシントン大学に留学中の和田です。よろしくお願いします。」
溝口さん「同じくIBPビジネス留学の61期生で、2019年秋出発でアメリカサンフランシスコ州立大学に留学中の溝口です。よろしくお願いします。」
注1.)株式会社ICCコンサルタンツが主催運営する大学での学びと海外企業でのインターンシップを組み合わせた1年間の留学プログラム。1989年に1期生を送り出して以来、延べ5000名の卒業生を輩出している。
このコロナ禍での留学、正直どうですか?
溝口さん「外出禁止令が出たのが3月半ばだったので、もうこの生活も2ヶ月くらいになります。まだ感染が広がる前にShelter in Placeが発令されたので、最初はあまり深刻に考えてなかったのが正直なところですが、家で過ごすうちに考えが変わって、インドアな趣味作りに励んだり、どうやって家で楽しく過ごすかを考えるようになりました。」
和田さん「最初は正直しんどくて日本に帰ることも考えたんですけど、日本もどんどんと同じ状況になってきたということと、もう少しアメリカにいたい気持ちもあったので残ることを決意しました。1ヶ月くらいして慣れてきて、今は普段しない料理や違うスポーツに挑戦したりして楽しめています。留学前は全然料理はしなかったのですが、簡単なものは作れるようになりました。」
工夫しながら慣れてきたオンライン授業
大学の授業はどんな感じですか?
溝口さん「オンラインで実施されています。先日、夏学期までの続行が正式にアナウンスされました。」
和田さん「ワシントン大学もオンラインで授業が行われています。ワシントン州の一部の大学では医療系の学部などは対面での授業にシフトするというニュースも出ていましたが、今はまだ私はオンライン授業ですね。」
オンライン授業は正直どうですか?
溝口さん「私はすごくあがり症なので、通常の授業のプレゼンテーションの前もたくさん準備をするんですが、それがオンライン上になって少し緊張しなくなり、やりやすくなりました(笑) 一方で自己管理がすごく大事なので、スケジュール管理を自分ですることや、テキストでのコミュニケーションに難しさを感じています。4科目くらい受講しているのですが、1クラス30~40人くらい(現地生含めて)います。ただ、留学生が多く、母国に帰ってしまっている学生もいるので出席は取らないなど大学側も工夫対応をしてくれています。4つのうち1つだけ、リアルタイムでグループワークをしたりしていますが、他の3つのクラスは動画をみて対応するタイプの授業方式です。」
和田さん「2つ授業を履修しているのですがどちらもZoomで実施されています。授業の半分は先生の講義、半分はブレークアウトルーム機能を利用して3人グループでのグループワークに移動して進めていくかんじですね。対面の時とは変わらず質問できているかなと思います。講師がやり方に工夫をしてくれてZoomのYes/Noボタンを使って学生も意思表示ができるようになりました。
工夫したり意識しているところはありますか?
和田さん「画面共有機能を使ったり、こまめに進度の確認をしたりコミュニケーションをとることを意識しています。あとは起きる時間が変わって生活リズムが変わってしまいましたね(笑)」
オンライン環境だからこそできること、気づくこと
大学のローカル生や友人の様子はどうですか?
溝口さん「早い段階で母国に帰ってしまった学生がいたのでキャンパスはずいぶんと静かでしたね。」
大学寮の対応は?
溝口さん「オンキャンパスの寮は今でもオープンはしています。プライオリティで段階分けをしていて、ローカル生は極力実家に帰るように促していて、留学生は寮に残れるようになっています。」
友人との連絡はどうしていますか?
溝口さん「ちょくちょくルームメイトや友人と連絡は取っていますね。いつもどおりのコミュニケーションかなと思います。」
課外活動への影響はどうですか?
和田さん「私はBigPic(注2.)という学生団体での取り組みを始めたところだったのですが、今オンライン上でチームメイトとも連絡を取っているし、記事掲載のためのインタビューできる人捜しは継続しています。対面ではなくオンライン上の実施ということと、今はむしろ皆さん時間ができたので対応してもらいやすいし、遠方の人にも対応をしてもらえるかもしれないという点でメリットも感じています。」
溝口さん「授業も落ち着いてきたのでMeet upに参加したいなあと思っていたので残念ですが、IBPの同期とSNSをはじめようと話していたタイミングだったので、動き出していたのですがそこが止まってしまったのも残念ですね。」
オンラインMeet upって参加しました?
溝口さん「私ではないのですが友人が対面のMeet upで元々知り合ったかたと2時間くらい話したと言っていました。」
和田さん「Meet upではないのですが、IBPの同期生がLanguage exchangeのプラットホームを立ち上げたので私もそのサービスを活用しています。」
注2.)Big PicはIBP生が立ち上げ、シアトルに留学中の学生で運営している学生団体です。ビジネスの最先端地であるシアトルから様々な働き方の情報を発信しています。
目まぐるしく変わっていく環境、必要な情報は自分で選別。
海外都市の取り組みで日本が参考になりそうなことはありましたか?
和田さん「ソーシャルディスタンスを守るという意味で、お店に入店できる人数が制限されていて、店の前で距離を保って並んでいる光景をみます。」
溝口さん「少しくらい前にマスク着用に対する罰金制度が発令されました。6フィート離れていないと罰金という制度もあります。日本とは違う取り組みだなあと感じます。」
和田さん「そうですね。シアトルにも罰金制度があります。あまり外出していないので実際に感覚値としてはないのですが。」
気をつけていることはありますか?
溝口さん「すべてを鵜呑みにはしないようにしています。必要な情報のみを自分で選別して意識するようにしています。
海外のグローバル企業の取り組みで、興味深いことはありますか?
和田さん「こちらの企業は、清掃業であってもあらゆる業態の労働者にStay Homeの指示を出しつつ保証はきちんとしていると思います。日本の企業だとそのような対応をする企業は多くはないと思うので、そういう点ですかね。」
溝口さん「全体的にスピード感を感じます。アップルなどもすぐにX月X日までにお店をクローズすることなどをすぐに発表しました。ただ同時にシビアな部分も実感しています。多くの方が解雇通達を受けているので。。」
スピード感という点ではシアトルでも同じように感じますか?
和田さん「そうですね。スピード感プラス、強制力というものが日本より強いのかなあと感じます。州ごとの政府の徹底した管理というのも日常生活の中で感じますね。」
周りの人への配慮を意識するように変わっていった
今回の出来事で、心境や価値観の変化はありますか?また、この状況下で外から日本を見て、何を考えますか?
溝口さん「最初は意識と現実が追いついてなかったし、ずっと家にいるのが苦痛だったのですが、サンフランシスコは対応が早かったので、他都市の状況をみていて、自分自身もそうですが人に移してしまうことを避けようと思う気持ちに変わってきました。日本ではサンフランシスコに遅れて1ヶ月後に外出自粛宣言が出され、正直なんで今なんだろうと感じました。自粛要請後に江ノ島に人が押し寄せている話などを聞いて、今自粛をしないと大変だよと思ったし、周りの人を思う気持ちが大切だと感じました。」
和田さん「真剣に考えないといけないと考えさせられたり実感するフェーズがありました。同じ時期に日本はまだ友人が飲み会をしていたり自由に動いていたので。スーパーに行くだけでも、自分は若いので感染してもリスクは少ないかもしれないですが、ホストファミリーに移してしまったらどうしょうと、考えました。」
むしろホストファミリーとのコミュニケーションは密に
自粛生活の中で英語を話す機会をどうやってつくっていますか?
和田さん「家にいる分にはむしろ今までよりホストファミリーとコミュニケーションをとる機会が増えたので、英語は使っていますね。ホストファミリーも外出自粛の生活ですので。」
溝口さん「ルームメイトと一緒に過ごす時間が増えて一緒に映画を見たりしているのでありがたいことに英語を使う機会は多いかなと思います。同時に、時間ができたこの機会に文法などを復習して勉強しています。」
自分で判断して決めたことが正解。今できることを進めます。
最後に今後について教えてください!
和田さん「将来的にOPT(注3)でアメリカで働きたいと思っているので、どのような状況になっても臨機応変に対応できるように準備や情報収集をして、視野も広く持ちつつ働ける先を探しています。友人からの言葉で、”どんな選択をしても正解はないから自分で判断して決めたことはそれが正解だ”と言われたことが印象に残っていて、その言葉を励みにしています。」
溝口さん「同期はすでに日本に帰国しているのですが(もちろんみんな悩んで苦渋の決断をしたのですが)、OPTをやりたいと強く思っていたので私の場合は帰国するという選択肢はなかったです。OPTで働けるよう引き続き準備も進めていますし、風向きは変わっているのでそんなに悲観的になる必要もないのかなと感じています。今できることを準備していこうと思っています。」
注3.)OPT=Optional Practical Training:アメリカで一定期間学んだ後に申請可能なビザ。全米を対象に最長12ヶ月、有給または無休で働くことを許可するもの。
取材後記
留学生として海外でチャレンジを続ける中、突然襲った新型コロナウィルスの脅威。まさか留学中にこんなことが起こるなんて誰が予想したでしょうか。そんな中でも常に前を向き、今できることに真摯に取り組む彼らの姿勢から学ぶことは多いですね。このような状況だからこそ、冷静に今を見つめ、学ぶことを止めない彼らの今後の活躍が今から楽しみです。
ICCはこれからも多くの若者の成長を応援し、サポートし続けます。
Author: 大八木 三由希
(株)ICCコンサルタンツ・ビジネス留学研修事部
コンサルタント JAOS認定留学カウンセラー/オーストラリア政府認定カウンセラー