世界中の人々の生活に大きな影響を与えている新型コロナウィルス。
日本でも年末年始にかけて、第三波が流行し、再び緊急事態宣言が発令されました。今回は各教育機関の休校措置はとられないとのことですが、一時はこのコロナ禍がもたらした教育現場での苦悩が取り上げられていました。
そんな中、いち早く都市封鎖を実施し、東南アジアの中でも比較的コロナの封じ込めに成功したマレーシア。
意外かと思われるかもしれませんが、その政策はとても迅速で厳格なものでした。
今、マレーシアではコロナ禍を経た「ニューノーマル」において、デジタルを駆使したサービスが急速な進展を遂げています。
今回はそんなマレーシアのコロナ対策と教育現場、現地情報をお届けします。
目次
- マレーシアの新型コロナウィルス感染症対策
・即座に発令された活動制限令(Movement Control Order)
・テクノロジー活用を政府が支援 - コロナ禍で急加速した「リープフロッグ現象」
- ハイテク先進国の教育ニューノーマルを知る!
・学校授業はすべてオンラインへ。学校行事もオンラインで!?
・オンラインから始めるマレーシア大学留学
・テレビで教育チャンネル配信。ネット環境がない家庭への配慮
・市民の行動はすべてアプリで記録。QRコードが感染抑制の鍵に! - やるときはやる!マレーシアの国民性から学ぶ実行力
マレーシアの新型コロナウィルス感染症対策
即座に出された活動制限令(Movement Control Order)
東南アジアにおける新型コロナウィルスの感染は2020年1月にタイで感染が確認された後、各地で感染が拡大しました。3月中旬頃よりマレーシアでも感染が拡大していきましたが、マレーシア政府は即座にその現状を受け止め、3月18日~3月31日までの活動制限令を発表しています。その後は感染状況に応じて活動制限の延長や、部分的緩和などが繰り返し実施されています。
活動制限令が発令されると、すべての政府機関および民間企業が閉鎖され、教育機関はすべてオンライン実施へ移行。
その後、マレーシアではコロナ対策として様々な施策が実施され人々の生活が一変しました。2020年8月1日からはフェイスマスクの着用が義務化され、違反者には、1,000リンギ(約25,000円)の罰金が科せられるようになりました。
テクノロジー活用を政府が支援
マレーシア政府は、電子決済の促進を目的とする「E-PENJANAプログラム」を設立し、Eウォレット(電子マネー)の利用者に対して1人当たり50リンギットを支給する政策を実施し、Eウォレットの使用促進を行っています。
また、午前8時から午後6時までのインターネット接続は、1ギガバイトまで無料(対象は政府関連サイトや教育、ビデオ会議目的での使用など)とし、政府のCOVID-19アプリケーションにアクセスするための無料の無制限インターネット、保健省や政府ウェブサイトへの無料アクセスを提供しています。
コロナ禍で急加速した「リープフロッグ現象」
前項でお話ししたような政府の対策もあり、マレーシアでは、急速な勢いでインターネットやスマートフォンが普及し、モバイル向けのサービスが急速に展開しています。
リープフロッグ現象とは、新興国が先進国から遅れて新しい技術に追いつく際に、通常の段階的な進化を踏むことなく、途中の段階をすべて飛び越して一気に最先端の技術に到達してしまうことを言います。固定の電話回線や光ファイバーなど、既存の社会インフラが日本に比べ圧倒的に整備されていないマレーシアで、スマートフォンのアプリやQRコードを活用した多様な最先端のデジタルサービスが次々と生まれています。今まさに、マレーシアでは、この「リープフロッグ現象」が起きているのです。
ハイテク先進国の教育ニューノーマルを知る!
学校授業はすべてオンラインへ。学校行事もオンライン!?
3月18日に活動制限令によりすべての教育機関が休校となりました。ともない、私立学校ではすぐさまオンライン授業が開始、国立学校であっても、2週間後からオンライン授業が開始されています。
このスピード感にも驚かされますが、各教育機関、教師陣の柔軟な対応力にも驚きです。オンライン授業への切り替えという急な対応を余儀なくされたマレーシアの教育機関において小学校で活躍をしたのが、「Class Dojo」や「Phoenix Classroom」というアプリ。
毎朝アプリを通して先生からメッセージが生徒達へ送られ、与えられた課題はアプリ上でアップロードして提出。先生からアプリ上で課題に対するコメントも届きます。もともとマレーシアの教育現場ではこのアプリが活用されていたため、オンライン後の移行もスムーズでした。
中学校ではTeamsやZoomなど、それぞれ様々なツールを組み合わせて活用されています。
スポーツデイなどの学校行事はオンライン上で実施され、子ども達の学習や学校行事が止まってしまうことはありませんでした。
ICCコンサルタンツ・マレーシアオフィススタッフのお子さん(中学生)も朝8時~16時まで部屋にこもって課題に取り組む毎日。通学をしていた頃よりも課題に追われて大変そうだったようです。
オンラインから始めるマレーシア大学留学
大学においてもZoomやウェブ動画、学校のポータルサイトを活用することによりオンライン授業が進められていきました。もともと学校ポータルサイトを利用していたこともあり、活動制限令が発令された直後からどの大学も即座にオンライン授業へ移行することができました。学費や寮費等の支払い管理もすべてオンライン上で完結します。マレーシアへ渡航する予定だった日本人留学生も、マレーシアへの入国規制が解除されるまでの間、日本からオンライン授業に参加。入学時期を遅らせることなくオンラインで留学をスタートしています。
テレビで教育チャンネル配信。ネット環境がない家庭への配慮
オンライン化が進められた学校教育ですが、インフラが日本のように整っていないマレーシアには、インターネットが普及していないエリアも多数存在します。そのような地域に住む子ども達のために、教育省により、テレビ教育チャンネルが開設されました。これによりインターネット環境がない家庭、パソコンやスマートフォンがない家庭でも視聴が可能となり、休校期間中も家庭学習に取り組むことができようになりました。
市民の行動はすべてアプリで記録。QRコードが感染抑制の鍵に!
マレーシア政府は、細かく制定した行動基準を、SMSを通して市民に配信しました。
電車に乗る際、買い物に行くとき、レストランに行くときもルールに従う必要があります。この感染者の追跡調査を確実に遂行するために活用されているのが「QRコード」です。
電車に乗るとき
QRコードを読み取り、画面を係員に見せ、体温チェックののち、改札を通ることができます。今では体温チェックもノンコンタクトタイプが店頭や駅に置かれています。
活動制限令発令当初は子どもをショッピングモールに連れて行くことも禁止されていました。今では、政府のコロナ追跡アプリはMy Sejahteraというアプリに統一されており、駅や飲食店、携帯ショップ、どこにでもQRが置いてあります。QRコードを読み取れば、氏名等を逐一記入する必要はありません。
やるときはやる!マレーシアの国民性から学ぶ実行力
東南アジアに対しておっとりしたイメージを持たれていた方は、ここまで厳格かつスピーディなマレーシア政府の対応に少し驚いた方もいるかもしれません。
もともと携帯の所有率が高いモバイル国家のマレーシア。デジタルに対する抵抗がなかったということも一因だと思いますが、ここまでデジタルを駆使し、様々な対策を講じることができた行動力と柔軟性には驚かされます。新型コロナウィルスという脅威によって人々の自由な活動や、人との接触が制限される中で、「今できることは何か」、教育や活動の機会を止めずにできることを考え行動に移した結果です。
もちろん、教育の完全オンライン化は容易ではありませんが、「まずは一緒にやってみよう」という先生や現場の声があったそうです。「できるのならやってみよう」という失敗に寛容な風潮が前に進み続ける原動力になったのかもしれません。
コロナ第三波で再び緊急事態宣言が発令された日本ですが、マレーシアから学び参考にできることがたくさんあるかもしれません。
Author: 大八木 三由希
(株)ICCコンサルタンツ・ビジネス留学研修事部
コンサルタント JAOS認定留学カウンセラー/オーストラリア政府認定カウンセラー