リーダー経験やボランティア経験の有無、人柄や学歴など、就活で求められるものはさまざまです。英語力もそのひとつであり、希望する業種によって求められるレベルが変わります。国際的な企業で働きたい方にとってはもちろんのこと、そうでない方にとっても、英語力は高めておきたいスキルです。
この記事では、就活と英語力に焦点を当て、業界ごとに求められる英語力の水準や、英語力を高める方法をご紹介します。
就活に英語力があると有利?
英語を使ってグローバルに活躍したい方にとって、言うまでもなく英語力は重要なスキルです。質の高いビジネスを展開するためにも高い英語力は不可欠であり、就活時には英語力をアピールできる材料をそろえておく必要があります。
一方で、海外勤務や国際的なビジネスを希望していない方の就活において英語力は不要なのかというと、そうとも言い切れません。
就活情報を提供しているマイナビによると、海外留学経験のある学生を積極採用している企業数は、マイナビ2025では約3,000社であるのに対し、マイナビ2026では約3,400社と、この1年間で約1.13倍に増加しています。
また、就職みらい研究所による「就職白書2024」においても、英語力を重視する企業は全体の12.1%(複数回答可)にのぼることがわかりました。これは、ボランティア経験の有無(9.6%)やパソコン経験・スキル(9.6%)を上回る数字です。英語力を重視する企業の内訳は、従業員数300人未満の企業は8.6%、300人以上999人未満の企業では13.0%、それ以上の企業では15%以上と、規模の大きい企業ほど英語力を重視していることがわかります。
以上のことから、グローバルな活躍を希望しない場合でも、大企業に勤めたい方や、就活をスムーズに進めたい方にとって、高い英語力は有利に働くといえるでしょう。
【レベル別】英語スキルを求められる業種リスト
どの程度の英語力を有する必要があるのかは、希望する業種によって異なります。
英語力をTOEICスコアに置き換えて、各スコアを求める業種をご紹介します。
簡単な会話ができるレベル【TOEIC500~595点】
TOEIC500~595点は、英検2級程度です。高校卒業までに求められる英語力と同程度だといえるでしょう。
基礎的な英語力が身につき、ある程度長い文章でも理解することができます。英語を重視する業界ではプラスの評価にはなりませんが、履歴書に書けるレベルです。TOEICの平均点よりやや下、もしくは同程度であり、企業によっては出願条件を満たしていない可能性もあります。
このレベルが求められる業種の例は、次のとおりです。
- テーマパークスタッフ
- ツアーコンダクター
- ホテルスタッフ
- 通関士
- システムエンジニア
国内勤務でおもに日本人を相手にするものの、外国人と接する機会がある、英語の文献や書類を読む必要がある、決まった範囲の英語を扱うといった業界が多くなっています。
日常会話レベル【TOEIC600~795点】
TOEIC600~795点は、英検2級~準1級程度です。
ある程度の長文を聞き取れるほか、自分の意見を英語で伝えられるようにもなりますが、論理的な理由を述べられるレベルにはまだ届きません。
TOEICの平均点よりも高得点であるため、履歴書に書くとプラスに働くでしょう。
このレベルが求められる業種の例は、次のとおりです。
- 大手メーカー・商社
- 中小企業の海外事業部
- キャビンアテンダント
- 外資系ホテルスタッフ
TOEIC500~595点レベルに比べると、業務で英語を使用する頻度が増えます。上場企業を目指す方は、このレベル以上が目安です。
ネイティブレベル【TOEIC800点以上】
TOEIC800点以上を得点できるのは、受験者全体の上位約15%です。英検準1級以上に相当し、仕事に英語力を生かすことができます。
英会話も英語の読み書きも非常に高度で、英語が得意だと就活でアピールできるレベルです。さまざまな場面で英語を細部まで理解でき、論理的に自分の意見を伝えられます。このレベルになると英語力を理由として不採用になることはなくなりますが、海外赴任を目指している方は860点以上を目指すと良いでしょう。
このレベルが求められる業種の例は、次のとおりです。
- 英語力を重視する大手企業
- 外資系企業
- 貿易事務
- パイロット
日常的に英語を使用するような海外との結びつきが強い業界を志望する方は、このレベルを目指すと良いでしょう。
なお、通訳・翻訳を目指す方は、900点以上が目安です。
就活で有利になる英語試験は?
英語試験の結果は、どのレベルの英語力を習得しているかを示すことができます。もちろん、エントリーシートや履歴書に記載することもできるのでアピールにも繋がります。代表的な英語試験の例は、次のとおりです。
実用英語技能検定
英検として広く知られているテストです。最高位は1級で、履歴書に書くなら2級以上、英語力をアピールするなら準1級以上が目安となります。
老若男女幅広い層が挑戦している資格であり、ビジネスではなく日常的な英語力が試されます。ビジネスで通用する英語力をアピールしたい方は、TOEICも受験すると良いでしょう。
TOEIC
主にビジネス英語の能力を測るテストです。最高点は990点で、履歴書に書くなら600点以上、英語力をアピールするなら730点以上が目安となります。500点以上であれば履歴書に書いてもマイナスにはなりませんが、平均点は580〜620点です。
TOEICには、一般的な「TOEIC Tests」と、初級・中級者を対象とした「TOEIC Bridge Tests」の2種類があり、「TOEIC Tests」は2つ、「TOEIC Bridge Tests」は3つに細分化されます。
【TOEIC Tests】
・TOEIC Listening & Reading(L&R)
・TOEIC Speaking & Writing(S&W)
・TOEIC Speaking
【TOEIC Bridge Tests】
・TOEIC Bridge Tests Listening & Reading(L&R)
・TOEIC Bridge Tests Speaking & Writing(S&W)
9割以上の受験生がTOEIC Listening & Reading(L&R)を受験するため、どれを受けるべきか迷った場合は、TOEIC Listening & Reading(L&R)を選ぶと良いでしょう。
TOEFL(iBT)
英語を母国語としない方を対象としたテストです。英語圏の高等教育機関への入学を希望する非英語圏出身者の英語力を測るために作られました。日本ではTOEICが有名ですが、欧米での認知度はTOEFLのほうが上です。
試験はCBT形式であり、Reading、Listening、Speaking、Writingの4つの力が試されます。満点は120点、日本人の平均点は70点です。外資系企業への就職を希望する方は80点以上、外務省への入省を希望する方は100点以上を目指すと良いでしょう。
このほか、TOEFLにはReadingとListeningの2つの力を測る「TOEFL ITP」テストもあります。こちらは企業や学校で実施するテストであり、iBTテストとは問題形式やスコアが異なります。
IELTS
海外留学や移住を希望する方の英語力を測るためのテストです。Reading、Listening、Speaking、Writingの4つの力をバランス良く測れるため、就活においても役立ちます。日本では、TOEICや英検ほど知名度のあるテストではありません。しかし海外では多くの企業がIELTSの成績を参考にしており、日本でも海外勤務のある企業などではIELTSを重視する傾向があります。
IELTSには合格・不合格はなく、各項目が0点(非受験者)・1点(非ユーザー)から9点(エキスパート・ユーザー )までのバンドスコアで示されます。また、総合成績に応じてオーバーオール・バンド・スコアが与えられます。
イギリス、ニュージーランドなどでは、就労ビザの取得条件としてIELTS6.0点を掲げています。IELTSの成績を履歴書に書くのであれば、6.0点以上が目安です。
Linguaskill Business
ビジネスシーンで求められる英語でのコミュニケーション能力を測るためのテストです。ケンブリッジ大学英語検定機構が開発し、世界50ヵ国の企業・団体が活用しています。試験のすべてがオンラインで完結するため、忙しい方でも受験しやすいことが特長です。
Linguaskill Businessには合格・不合格はなく、CEFRに基づいた評価が与えられます。最高評価はC1、初心者はA1です。履歴書に書くのであれば、上から2番目のレベルであるB2以上を取得すると良いでしょう。
就活で有利になる英語力の身に付け方
目指す職種で求められる英語力やスコアを確認したら、英語力を高めるための行動を実行しましょう。
英会話教室に通う
大学に通いながら英語力を身につけるのであれば、オンライン英会話や英会話教室がおすすめです。大学やアルバイトと両立しながら、手軽に英語を学べるでしょう。独学では3日坊主になりやすい方や、英語を話す機会を作りたい方に、とくにおすすめです。
英会話教室に通う場合、基本的には短時間のレッスンを定期的に受講することになります。そのため、就活で評価される成果を出すには学習量が十分だといえず、漫然と通うだけになってしまいがちです。
海外留学に行く
本格的に英語力を高めたい、短期集中型で英語を学びたいと考える方には、海外留学をおすすめします。大学やアルバイトとの両立が難しく、英会話教室よりもさらに高額な費用がかかりますが、生きた英語を身につけることができるでしょう。留学経験は学生時代の貴重な経験であり、履歴書やエントリーシートに記載してアピールすることも可能です。費用については、奨学金制度を利用できることもあります。留学エージェントや大学の留学センターなどに相談すると、最適な方法が見つかるかもしれません。
海外留学は、さらに次の3つに細分化できます。
語学留学
英語力を集中して身につけたい方には、語学留学がおすすめです。短期から長期まで自分に合った期間で、本場の英語を学べます。現地の方やほかの留学生と交流したり、現地の生活に触れたりするうちに視野が広がり、異文化コミュニケーション力も高まるでしょう。
ワーキングホリデー
ワーキングホリデーでは、現地で働きながらネイティブの英語を学べます。賃金が発生するため、費用を抑えて留学することが可能です。ビジネスシーンで通用する、生きた英語を学びたい方におすすめです。
インターンシップができる留学
海外でのビジネス経験を積みたい方には、インターンシップができる留学(海外インターンシップ)も選択肢のひとつです。「海外で働く」という点でワーキングホリデーと海外インターンシップは似ていますが、ワーキングホリデーではカフェでのアルバイトなど自由な働き方を通して現地の文化を学ぶのに対し、海外インターンシップでは主にオフィスワークに従事しながら、海外勤務のノウハウを吸収します。
「海外でいきなり働くのは不安」という方には、IBPビジネス留学プログラムがおすすめです。留学期間の前半は大学で語学や専門分野を学び、後半でインターンシップに参加できます。海外企業でのインターンシップ経験は、就活でも大きなアピールポイントとなるでしょう。
留学生Tさんの体験談(サンフランシスコ州立大学 修了)
ニューヨーク/ロサンゼルスで人材派遣・サービス系の企業でインターンシップを経験しました。
既存の在米日系大手企業訪問や現地のリテールストアおよびその管理法人、販売イベント主催者に対しての新規プロダクト(食品)営業。プロジェクトマネージャーとして在日クライアントとの打ち合わせの進行や販促物作成、データ資料作成などを担当しました。
社会人としての常識、営業、マーケティング、プロジェクトマネジメント、ビジネスコミュニケーションの実践やビジネス構造を学ぶことができました。
留学生Kさんの体験談(シアトルセントラルカレッジ 修了)
就職活動では、インターンや課外活動を個々に細かく話すのではなく、「コロナ禍で続行が難しくなった留学を最後まで諦めずに完走した」というエピソードを話しました。
コロナの影響で多くの同期が早期帰国を選び、私も留学の意義を見失いそうになりました。しかし、幸運にもリモートインターンの許可が大学から出て、インターンの内定を得るための活動を行いました。その結果、その企業でも一定の成果をあげることができました。
このストーリーを通じて、自分の「粘り強さ」や「泥臭さ」をアピールしました。
海外留学は就活に有利?
高い英語力が就活に有利に働くことは、冒頭でご紹介したとおりです。
英語力は、自宅でテキストを読んだり、英会話スクールに通ったりしても、ある程度までは高められます。海外留学には費用も時間もかかるため、留学までしなくても良いのではと悩んでいる方も多いのではないでしょうか。
海外留学を経験すると、英語力だけではなく、就活に有利に働くアピールポイントも得られます。英語力に留学経験をプラスすると、さらにスムーズな就活が期待できるでしょう。
語学力+海外の大学で学んだことをアピールできる
英語にこだわって就活する方が陥りやすいのが、「英語だけができる」状態です。国際化が進む昨今では、「親の仕事で海外で暮らしていた」「海外ドラマが好きで英語をマスターした」といった学生は少なくありません。英語ができるに越したことはありませんが、英語だけができる状態では、ほかの学生に埋もれてしまいがちです。
海外留学では、英語を使った主体的かつ実践的、専門的な学びを経験できます。自分の経験として説得力のあるアピールがしやすく、ほかの学生と差をつけられるポイントです。
コミュニケーション力や行動力をアピールできる
知らない土地で、知らない人に混じって生活を始めることは、日本国内であっても不安を感じるものです。言葉も文化も異なる海外での生活は、誰にでもできるものではありません。
海外留学のエピソードは、語学力だけでなく、行動力やコミュニケーション能力も高いことをアピールするポイントとなります。留学中に感じたこと、体験したことをイキイキと伝えると、社会人になっても活躍しそうな人物であると印象づけることができるでしょう。
海外インターンを経験すれば実務経験をアピールできる
IBPビジネスプログラムでは、海外の大学での専門的な学びと海外企業でのインターンシップの両方を経験できます。就活の時点で海外での実務経験がある学生はあまり多くなく、ほかの学生と差をつけられるアピールポイントです。企業からも高く評価されており、就活での大きな強みとなるでしょう。