卒業式で歌う合唱曲を作詞作曲。お世話になった人たちへ感謝の気持ちを込めて
インターン体験を通して、進みたい道が明確になった
7月にサイクリング中に撮った1枚。川沿いには、歩行者やサイクリング用の道が50キロ以上に渡って続いています
シカゴの知り合いと、バハイ教礼拝堂前にて
クリスマスシーズンに、ホストの娘さんたちと。クリスマスプレゼントにピアノの連弾の楽譜をいただきました
友人の結婚式のため、ルーマニアのヤシに行った時に撮った文化宮殿
インターン先のパフォーマンスセンター。2月には、世界的に有名な弦楽四重奏団のクロノスクァルテットの演奏を生で聴けて興奮しました
上杉さんは音楽大学在学中にIBPに参加したんですね。
大学では音楽学部音楽学科に所属し、作曲を専攻しています。大学3年を終えて、4月から休学し、渡米しました。
なぜIBPに参加したのでしょうか?
大学で学んでいる音楽は、それだけでは経済的に生活していくのが困難なもので、将来への漠然とした不安がありました。そこで「音楽+何か」を持っていることが必要と思い、ビジネスの勉強を考え始めました。また、大学3年の夏に、初めて海外旅行でアメリカへ行ったのですが、そこで出会った人々の優しさやあたたかさと同時に、地理的・文化的差異に触れ、非常に興味を持ちました。
上杉さんにとってIBPプログラムはどんなところが魅力でしたか?
1年という短過ぎず長過ぎない期間で、語学・ビジネスをまとめて学べるところです。現地でのインターンが可能であること、これまでにさまざまな分野の学生が参加していることも魅力的でした。
日本の大学との一番の違いはどんなところでしたか?
さまざまなバックグラウンドを持った学生がいたことです。あるビジネスの授業では、学生の3割がすでに働いている人、3割が仕事を解雇された人という状況で、平均年齢も40歳前後でした。このクラスで、アメリカの雇用悪化の現状を体感しました。
特に印象に残っている授業はどんな内容でしたか?
役に立った授業としてはAdvertisingが挙げられます。このクラスは非常に準備が整っていて、課題・グループワークのバランスもよく、充実していました。ほかに印象に残っているのは、ゴルフと社交ダンスのクラス。現地の日系企業に勤めていらっしゃる方に勧められて受講しましたが、どちらも日本ではなかなか経験できない授業でした。
どんなところでインターンを体験しましたか?
Kirkland Performance Center(カークランドパフォーマンスセンター)という施設でインターンを行いました。地元の人たちに向けて、良質な芸術を提供する施設です。一番の特長は提供する内容で、ミュージカルにベリーダンス、ケルト音楽から現代音楽まで、さまざまなジャンルがありました。私はここで、契約を司るプロダクション部門、ドナーや観客との関係を築くディベロップメント部門、舞台でアーティストと関わるテック部門の3部門で働きました。
インターンを通して得たものはありましたか?
自分がやりたい事柄がより明確になりました。パフォーマンスセンターの仕事は、端的に言えば、アーティストと観客との「繋ぎ役」です。私は以前からこの「繋ぎ役」に興味があり、インターンを通じてその気持ちがより強くなりました。それと同時に「作曲を続けたい」「アーティスト側でありたい」という思いも高まり、このことが、後の就職活動や大学復学後の取り組みに影響を与えています。
インターンシップ以外にボランティアなどは体験されましたか?
日本を紹介するイベントでの浴衣の着付け補助や、日本食レストランの開店イベントの受付、低所得者向けの食料配給センターでのボランティア、日本からの交換留学生向けプログラムのアシスタントなど、さまざまなボランティアに参加しました。
現地でのホームステイはいかがでしたか?
寮生活に比べて食事や家族行事を通じて英語を使うことが多い点や、現地の家族の一員になることで、より現地での「リアル」な生活を体感できる点など、ホームステイには大きな魅力を感じていました。現地では2つのファミリーにお世話になりました。夏までは両親と5歳の息子がいる家庭で、その後は両親と9歳と7歳の娘が2人といる家族と過ごしました。「食事こそが家族の最も大切な時間の一つ」と思っていたので、どんなに忙しくても、夕食の準備から片付けだけは家族との時間を最優先させました。また、夏はキャンプ、冬はクロスカントリースキーなど、家族イベントにも参加しました。
卒業式での合唱曲を作詞作曲し、卒業式では指揮をしたそうですね。
留学して間もない頃、私の誕生日に同期のIBP生がサプライズイベントをしてくれました。まだ知り合って1ヶ月にも満たない頃で、とても嬉しく思い、プレゼントされた五線紙で「音楽を通じて皆にお返ししたい」と考えました。作曲した合唱曲には、IBP生やホストファミリーをはじめ、お世話になった全ての方への感謝の気持ちを込めて、詩を読んだ時にシアトルを思い出せるようなキーワードを盛り込んでいます。卒業式当日は、同期の仲間や現地の人々に出会えた幸せを噛み締めながら指揮をしました。
IBPの体験は、上杉さんの価値観やキャリア形成にどのように影響しましたか?
さまざまな価値観を持った方々にお会いしたことで、自分の視野が広がると同時に、その中から自分にとって大切なものを取捨選択していくことの大切さを学びました。これは単にビジネスや語学といった枠を超え、日々を過ごす上での姿勢に大きな影響を与えています。
現地および日本のICCスタッフのサポートについて、感想をお聞かせください。
協力的で、何度も助けられました。日本のICCスタッフの方からは、留学前にどんなことをすればいいかアドバイスをいただいたり、現地のスタッフの方からは、自分の興味や希望に沿ったボランティアや現地での過ごし方などを教えていただきました。現地で突然、腕がしびれるという事態になった際も、対処方法などを教えていただきました。
就職活動について教えて下さい。
留学中の11月後半に日本の留学生を対象にした「ボストンキャリアフォーラム」が行われるので、9月から準備を始め、そこで初めてエントリーシートづくりや面接を体験しました。キャリアフォーラムでの具体的な成果はありませんでしたが、この経験を通じて興味のある業界が広がり、日本での就職活動の準備に大いに役立ちました。本格的な就職活動は12月から。4つの就職支援サイトに登録し、ボストンキャリアフォーラムで興味を持った業界を残らず調べ、興味のあるものをリストアップしました。その中で物理的に条件が合わないものを消し、残ったものの中から特に興味のある企業を選び、選考の準備をしました。
3月に帰国してから内定獲得までの経緯は?
帰国してから1ヶ月はさまざまな業界の説明会に参加し、興味が薄れた業界は大胆に切り捨てました。その結果、残ったのは音楽や芸術関係の5社前後で、残りの期間はそれらに集中し、5月上旬に音楽系企業から内々定をいただくことができました。
就職活動にIBPでの体験が有利に働いたと思いますか?
はい。面接の際に「音楽大学に在籍していながら、なぜビジネスを学んだのか」ということを多く聞かれ、それを評価してくださる企業がいくつかありました。インターン経験が「実際の企業で働いたことがある」という物理的証明にもなり、自信を持って面接に臨むことができました。
就職内定先の企業を選んだ理由は?
内定をいただいたのは、ピアノを中心とした音楽の質の向上・普及を行う音楽系の企業です。この企業の事業内容はまさに興味の持っていた分野であり、音楽をビジネスの視点で客観的にとらえている点にも魅力を感じました。作曲も並行して続けられる労働環境であり、経済的自立と作曲が両立できることが、この企業を選択した最大の理由です。
シアトルダウンタウンのMcCaw Hallにて。バレエ「くるみ割り人形」を満喫しました
今後の展望や将来の夢を教えてください。
一社会人として経済的に自立すると同時に、一音楽家として生きることです。仕事と個人的な音楽活動が、いい意味で相乗効果となれば幸いです。
IBP参加希望者へのメッセージ、アドバイスをお願いします。
行動する人、明確な目標を持つ人、たとえ目標が不明瞭であっても、それを自覚し何とかしようとする人。IBPはそんな方にぴったりのプログラムだと思います。応援しています。
*体験談の内容は寄稿時の情報です。