高校での留学というと、どんな事をイメージされますか?英語の上達に役立ちそう。親元を離れての生活って大丈夫なのかしら? など期待と、不安が入り交じりますよね。
今回は、ICCで20年以上にわたり高校留学をサポートしてきた須山さんに息子さんの留学を通じて感じた「高校時代に留学する意味とは?」を語っていただきました。
<プロフィール>
日本の大学在学中に1年間オーストラリアの大学に交換留学。一般企業での営業職を経て、2001年よりICCコンサルタンツにて高校留学プログラムに従事。2021年9月から2022年6月まで、息子さんがカナダの公立高校に留学。
留学のきっかけは?
● 早速ですが、息子さんが留学する事になった経緯を教えてください。
息子は中学から私立中高一貫校に通っており、楽しく学校生活を過ごしていました。運動系の部活をやり、お友達もいて…と順調な学校生活だったと思いますが、短期で海外留学はさせたいなと考えているところに、コロナ。中学3年で行く予定だった短期留学も難しいとなって、進学準備などを考えると、そもそも留学自体はもう無理だなと考えていました。
● どちらかというと母として、留学させようという感じですか?
こんな選択肢もあるよと見せてはいたのですが、仕事柄、親主導で留学を進めると良い結果につながらない事は見てきていたので、私から「留学しなさい」「留学行けば?」という声がけはできるだけしないようにしていました。したいなら、自分から言ってね。という感じで。
友人が中学2年で短期留学した時も本人は「良く行くなぁ。ご飯おいしそうじゃないから、俺は無理」と言っていたくらい。それが、帰国していろいろと話しを聞くなかで、「あれ?ちょっと行ってみるのも面白いかも」と少し認識が変わってきたんですね。その後、中学2年の冬に家族で海外旅行をした時に、「英語が話せると、(現地の)知らない人と話ができたり、得することもある!」と感じた様で、より興味がわいた様子でした。
● 具体的に手続きをはじめたのはいつ頃ですか?
留学開始時期の10ヶ月くらい前(中学3年秋頃)でしょうか。学校から帰ってきて「留学するならいつが手続きの〆切?」と聞かれたんです。コロナ禍だったこともあり、留学先も限られるし、受け入れ状況もまだ安定しない所もあったので正直「あれ?今その気になっちゃった?」という感じでした。でも、本人が興味を持った様子だったので、留学のリアルな様子や彼の状況を加味してメリット、デメリット両方伝えました。
● デメリットとは?
小さい事ですけど、高校2年夏まで留学する様なスケジュール感だったので、修学旅行に参加できないよとか、中高一貫校のメインで関わる高校2年の文化祭はほぼ準備を終えた頃に帰国だよとか。留学中に文系、理系を選ばなければいけないですし、戻ってきた後そもそも勉強について行けるかな?とか。
● 息子さんの反応は?
「どれも小さい事だね」と言われました(笑)わかっていて言ったのですが、改めて本人から言われると私的には少しショック。でも私のこういったトラップには引っかからなかったので、本気度は高いのかなとも思いました。だったら留学して何をしたいの??どうして留学したいの?とさらにそこから話しを詰めました。
● 息子さんにとっての留学する意味とは?
周りは将来の目標があったり、行きたい大学があったりする子が少しずつ出始める時期だったようで「自分には何もない」と漠然と思ったようです。大学には行きたと思っているけど、目標が無いまま突っ走ったら途中で失速する。と言われました。そのためにも一度日本の外にでて、いろいろなものを見てみたい。経験をしてみたい、と考えた様です。
● そのときの須山さんの反応は?
もともと高校での留学はとても意義深いという思いがあって。これは仕事で関わっているからではなく、私が心の底から思っていること。まだ将来が固まっていない、なにものでもない10代のうちに、当たり前の環境から外に飛び出すって勇気がいりますが、飛び出してみて失う物って無いと思っています。むしろ、自分に可能性があることや、やってみたらできる事を親の手が届かないところで自分で見つけて、実感することにすごく意味があると思うのです。だからこそ、応援したいと思う気持ちはありました。ただ、現実的に「復学の条件は?」とか「費用はいくらかかるんだっけ」など改めて親として「確認しなければ!」という感じでした。
● 最終的にはカナダに留学されたんですよね。カナダを選んだ理由は?留学先として最適だったからですか?
カナダが留学先になった理由はとても単純で「コロナ禍で渡航できる高校留学先がそこしかなかった」というのが正直なところです。本当は私自身も留学経験があり、本人も旅行で行ったことがあるオーストラリアが良いかなと思っていたのですが、そのときはまだ渡航制限が解除されていなくて。でも今となっては本人は「カナダが俺のアナザースカイだな」なんて言っています:笑
留学実現に向けて、準備すべきことは?
● 留学手続きを進める中で、何か具体的に準備したことはありましたか?
これ、皆さんからも良く聞かれる質問ですね。英語学習とか、科目の勉強でやっておいた方が良い事ありますか?とか。
英語学習はさすがに少しやらせました。というのも、息子は本当に、冗談抜きで英語は苦手科目だったので…。英検も受けたことなかったですし、小さい頃から英会話などを習わせたりもしていませんでした。留学が決まってからは、英語を話すことを怖がらない程度に英語に多く触れる時間を持たせるのと、現地の高校で学習について行けるように、長文を読んだり、英文を書くことに重点を置いた個別指導を探して受けていました。
それ以外の科目の勉強は「とにかく学校の勉強をしっかりこなす」ことですね。試験対策としての学習ではなく、数学や理科は留学先でも同じ内容を英語で学ぶだけなので、理解して取り組むように話しました。
● それ以外には何か準備しましたか?
当たり前なのですが、基本的な自分の事は自分でできる様にしました。朝は自分で起きる。自分が食べるものは簡単な物で良いので自分で作れるようにする。洗濯のやり方など。
留学となると「英語を」「科目の学習を」と目が行ってしまいがちなのですが、私から見ていると高校留学は「少し早い親からの巣立ち」だと思うのです。
日本にいるとなかなかやる時間が無い、やる必要がない、つい親が手を出してやって上げてしまいがちな「自分のこと」を留学先では自分でやるのが当たり前。滞在先のホストも意地悪とかではなく、そうやって子供たちが自立していくのを見守ってくれているんですよね。そういった身の回りの事を「やってもらって当たり前」から「自分でやるのが当たり前」という意識に変えられるように、日本にいる間にできるように準備しました。
留学後、親として気をつけるべきポイントはここ!
● さすが「留学のプロが身近にいる留学準備!」という感じがします。実際留学がスタートした後は順調でしたか?
私自身が留学を熟知しているというのは、本人にとっても有利だったと思います。ちょっとやそっとのことでは驚かないので(笑)。それでもやはり我が子のこととなると、親の心理はこんなにも不安に感じたり、心配になったりするのかとも思いました。
例えば留学先の空港には、ホストがお迎えに行ってくださることになっていて、ICCの現地スタッフも無事に会えているかチェックするために空港に出向いてくれています。でも入国審査が長蛇の列でなかなか「ホストに会えた」という連絡が本人から入らないので「無事に到着しているのか?」「空港で一人途方にくれているじゃないか…」など。つい悪い方に悪い方に考えてしまって、本人宛にラインを連投(笑)。本人からは「こっちでホストとアドバイザーさんとやりとりしているから、ちょっと待って!」と言われてしまいました。
離れて見守ることがこんなにしんどいのか…と親として最初の洗礼を受けました。反面、本人を信じて任せなきゃ駄目なんだと再認識したきっかけでもありました。
● ホストの方とは連絡を取られましたか?
できるだけ本人が主体になるように意識していたので、私がしゃしゃり出ることは控えるようにしていました(笑)。最低限必要なお礼などは伝えましたが、それ以外は本人を通じて敢えてやりとりするようにもしていました。これは留学前も留学中も共通ですね。
ホストの方も息子の活動などをご家族で見に行ってくださった時にとった動画などオンラインで共有くださったりもしましたので、気にかけてくださっていること、時間を割いて行っていただいたことはお礼も伝えましたが、あっさりしたコメント。みたいな感じでしたね。
● ご本人との連絡は頻繁にしていましたか?
基本、こちらからはよほどのことがないとしないようにしていました。空港到着時に「今やっているから!」と言われたことからもわかるように、留学先では子供たちは子供なりに考え、自分の留学生活を送っています。
つい、こちらの都合や思いで「どうしているの?」「大丈夫なの?」と確認したくなるのですが、やればやるほど私とのコミュニケーションが密になって、現地で本当に必要なやりとりがおろそかになるのは、本末転倒だなと思ったからです。
父親には「所持金の残高が少なくなって…」という連絡はしていた様ですが(笑)、私には必要な時に向こうから連絡してきましたし、頻度も到着直後から現地での生活に慣れるに従って減りましたし、相談から報告に変化してきました。
最初の内は、不安を口にすることもありましたが、私からは「大丈夫」と励ます事しかせず、答えやアドバイスはできるだけしないようにしました。そのうちに現地での生活にも慣れ、「自分でなんとかしなければ」と思う気持ちが芽生えてきた様です。
結果、彼が苦手だった「自分の考えを言葉にして私たちに伝える」事が少しずつできる様になってきたように思います。
●「自分の考えを言葉にして伝える」というのは?
親なので、つい本人の特性も分かっているので本人から「多分こうなんじゃないかな?」と言われても「本当にそうなのか確認して!」と指示をしてしまったり、あるいはこちらから「『多分…』てこういう意味?」と、子供が短い言葉で返事ができる様に答えを誘発しようとするというか、こちら主導で答えを狭めるようについしてしまうことがあります。でもそうするといつまでも子供は「お母さんから答えが出てくるから、それを待って、Yesや Noを言えば良いんだ」とすり込まれているように思えて…。でも敢えて、「支払いをするには○○がわからないと手続きできない」とか「許可するには、あなたがどうしてその答えにたどり着いたかわからないと簡単にOK出せないよ」と彼らがほしい答えのためには、いろいろな状況説明や判断基準をこちらに教えて…、と繰り返し伝えるようにしていました。結果、「この科目は辞めることにした。その代わりにこっちの科目を履修するよ。先生にも聞いたら(中略)、周りの友達はこう言っていて(中略)、でも帰国した後のことを考えるとこれが最善と思うから」という具合に、起承転結というか、自分の考えを言葉にして、状況も確認した上でこう判断した。というコミュニケーションができる様になってきたのです。
正直、これは帰国後、大学受験を控えた今でもとても役に立っているなと思います。科目履修や大学選び、また日々の生活の行動含めて、自分の考えていることをどうやって相手に説明すれば理解して貰えるのか、適切なアドバイスが聞けるのか、という事が身についているので、いちいちこちらが尋問(笑)しなくても良くなったのは、わたしは何よりの成長だなと思っています。
● 英語が身につくと言う以外にも大きな成長ですよね。
本当に。極論、英語を上達させたかったら日本にいてもできる人もいますよね。でも親元を物理的に離れる。完全に今までと違う環境で自分で何かに取り組んだからこその成長だと私は思います。
● 他に息子さんが変わったなと思う所はありますか?
本当にちょっとした事ですが、日々の生活の中で周りに感謝できる様になったと思います。またホストがまだ小さなお子さんがいるご家庭で、ホストファーザーやホストブラザー含め、一緒に協力して家族が生活している様子を見て「お母さんって大変!」と思った様です。我が家も共働きで、私が仕事をする事に対しては頭ではわかっていたと思いますが、「お母さんだから当たり前」と感じていたこともあるかと思います。それが他のお宅にお世話になり、小さい子の面倒をみながら仕事するホストマザーの様子を見て「自分も育ててもらった時は、こうだったのか」と想像した様子です。
今では弟に「作ってもらった物は文句言わずに食べろ」とか「洗濯してもらって当たり前と思うな」とまるで小さなお父さんみたいです:笑
高校留学は少し早い「自立、親離れ」への第一歩と常々思っていましたが、我が子のこういった成長を目の当たりにすると、行かせてよかったなと心から思いました。
高校留学を考えている親御様、いかがでしたでしょうか?留学のプロでも、やはり我が子の事となると心配事は尽きない様ですが、やはり高校留学だからこそ身に着く事や気づく事も沢山あります。このブログを読んで興味を持った方は、是非一度無料個別相談や無料セミナーにお申込みください!