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VOL.22

松下英樹さん   ノーベル賞受賞者を輩出した権威あるガン研究所で、
貴重なインターン体験
 
松下英樹(まつしたひでき)さん
1972年生まれ。大阪薬科大学大学院卒業後、外資系製薬会社勤務。2003年9月IBPワシントン大学コース参加。現地では、フレッド・ハッチンソン癌研究センターにてインターンシップ。帰国後、外資系製薬会社に復職。

■参加コース:IBPプログラム・ワシントン大学
■参加期間:2003年9月〜2004年9月
■インターン先:フレッド・ハッチンソン癌研究センター(アメリカ・シアトル)
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語学力と専門性を高めるために、会社を休職してIBPに参加

Q: IBPに参加した目的を教えてください。

A:大学院を卒業後、製薬会社に就職して臨床開発などの業務を担当していましたが、入社して4年ほどたった頃に、以前から希望していた長期留学の夢が再燃。語学力アップだけでなく、せっかくならこれまでの経験を踏まえて専門性を高める留学がしたいと考えていたところ、IBPに参加した友人から話を聞き、このプログラムに参加したいと思ったのです。上司に相談すると、快く承諾してもらえました。IBP参加のために、会社を退職する必要がなかったのは運が良かったと思っていますし、今の上司にも大変感謝しています。

Q: ワシントン大学での専攻は?

A:IBPプログラムでは通常のビジネス英語の他に、3rd quarterで現地の学生向けの授業を受けることができますが、私は自分の教養を高める意味で、敢えてビジネスとはあまり関係のない”CHADO AND JAPANESE AESTHETICS”という日本の茶道を学ぶというコースを取りました。留学の1年前から日本で茶道を習い始め、茶道の奥深さにとても興味を持っていたので、たまたまこのコースを見つけ迷わず申し込みました。コースには大学でのレクチャーと、大学近くの裏千家出張所のお茶室での実技が含まれています。現地の学生の間でも大変人気があり、現地の学生の熱心さに驚かされるとともに日本人としてうれしく思いました。

Q: 留学期間中、英語力アップのためにどんな工夫をしましたか?

A:大学が行っているボランティアカリキュラムの一環で、カンバセーションパートナー制度に登録しました。これは大学の仲介で他の言語を学びたいと思っている人同士を紹介するというプログラム。この制度を利用してカンバセーションパートナーを見つけ、お互いスケジュールがあう日を調整し、大学のカフェテリアやレストランなど好きな場所で会話をしました。私の場合、2人のカンバセーションパートナーができ、1人はワシントン大学の国際政治学専攻の学生、もう1人は学校で先生をしているという社会人で、彼らと英語、日本語で楽しく話をすることができました。
また、インターンシップを始める前までは、ADA(American Diabetes Association)という糖尿病患者さんの支援を行うNPOで、ボランティア活動を行っていました。本格的なインターンシップを始める前に、ここで実際の業務のお手伝いをしたことは、アメリカの職場に慣れるという意味で大いに役に立ちました。

Q: インターン先はどのように探したのですか?

A:仕事に関連したところと考えていましたが、なかなか希望のところを見つけられませんでした。探していくうちに、偶然なのですが、”CHADO AND JAPANESE AESTHETICS”のコースを受け持っているシアトル裏千家出張所のトップの方が、シアトルバイオテクノロジー業界ではとても権威のある方だと知りました。その方にお願いして紹介いただき、Fred Hutchinson Cancer Research Centerというすばらしい施設のインターン先を見つけることができました。

Q: インターン先の主な業務内容を教えてください。

A:シアトルに拠点を置くフレッド・ハッチンソン癌研究センターは、アメリカのみならず世界中において骨髄移植に関しての指導的な役割を果たしてきた医療機関で、よく「骨髄移植のメッカ」と表現されます。骨髄移植の研究のみならず、癌治療のための多種多様な最前線の研究が行われています。私がインターンをしていた昨年も、この研究センターで3人目となるノーベル医学賞受賞者が決まり、改めて世界トップクラスの研究がここで行われていることを実感しました。

Q: そこで松下さんはどんな仕事をしていたのですか?

A:私が所属していた部署はClinical Trial Officeと呼ばれ、臨床試験が適切に行われているかどうかのチェック、治療薬を服用している癌患者さんのサポート、臨床試験を依頼する製薬会社との窓口業務などが主な仕事です。私は、主に患者さんの試験データやカルテなどをチェックする、いわゆる「モニター」業務に携わっていました。
インターン中は、医療機関側の聴講としてIRBと呼ばれる会議にも出席することができました。IRBとはInstitutional Review Boardの略で日本語では治験審査委員会と呼ばれています。日本であれば私はメーカーの社員ですので、まず参加することは許されないのですが、アドバイザーの特別な計らいにより数回出席することができ、貴重な体験となりました。

Q: 研究所でのインターン体験を通して学んだことは、現在の仕事に役立っていますか?

A:日本とアメリカでは臨床試験のシステムやアプローチが大きく異なり、日本でのやり方とのギャップにとても驚かされました。3カ月という短い期間でしたが、アメリカでの臨床開発システムを学ぶことができ、今後のキャリアアップに非常に役立つと思います。
インターンシップを始めたばかりの頃は、カルテの記録を読む際、難解な医学英語を理解するのにとても苦労しました。アドバイザーに相談したところ、わからない単語一つ一つを丁寧に教えていただき、現地の医学生がよく使う参考書を薦められました。インターンシップが終わる頃には、かなり理解できるようになり、アドバイザーには本当に感謝しています。

Q: IBP参加希望者の中には、製薬・医薬分野の人たちも少なくありません。そうした人たちに向けて、アドバイスをお願いします。

A:医薬品臨床開発の分野では、アメリカ・ヨーロッパ・日本の3極におけるICH(日米EU医薬品ハーモナイゼーション国際会議)と呼ばれるガイドラインが作られ、これまで日本独自で行っていたシステムが、グローバルスタンダードを基準としたシステムへ移行しつつあります。英語の勉強はもちろん、世界的な流れを知る上でも欧米諸国における医療関連施設でのインターンシップはとても勉強になると思います。私にとってこのインターン体験は、日本では決して体験できないことが多く凝縮されていました。失敗を恐れず、ぜひチャレンジしてみて下さい!
 
インターン先の職場の人たちと(私のいた部署は、私以外は全員女性でした)


大学で茶道の実技授業 (日本でも着たことのない着物を着せてもらいました)
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