帰国子女の薬学部受験は不可能ではありません!
ただし、前々からの準備が必須です

参加コース:オーストラリア高校卒業留学プログラム
留学期間:2005年4月〜2007年12月
留学先:グレンアイラ・カレッジ(メルボルン

1988年生まれ、愛知県出身。高校1年生の時にオーストラリア・メルボルンにあるGlen Eira College(グレンアイラ・カレッジ)に留学。卒業後は帰国して、愛知学院大学薬学部に進学。現在大学2年生。

留学前は「人と違う部分」を抑えていましたが、移民の国に留学して「自分は自分でいいんだ」と実感

cityの風景

Great Victorian Bike Rideにて。大自然を走り抜けました!

ホストと一緒にDerby Dayに参加しました。フェリーの上でパチリ

お世話になったホストと最後は涙のお別れでした

大好きな学年コーディネーターの先生と。よくオフィスに行って勉強を教えていただきました。着ているのはデザインしたY12のジャンパーです

Q:高校留学を決めた理由、きっかけは?

A:高校1年生まで日本で勉強していたのですが、日本の学生生活において、何か物足りなさを感じていました。日本独特の雰囲気なのかもしれませんが、常に皆で同じことをして、1人だけ違ったことをすると目立ってしまい、陰で言われてしまう…。そんな毎日に息苦しさを感じていました。
「このまま高校を卒業して、一体、精神的にどれだけ成長できるのだろう?」と悩んでいた時に、両親からの薦めもあって留学の道を選びました。殻を破って大きなことに挑戦したかったこと、自分の力を試してみたかったことが留学を決めた理由です。

Q:メルボルンはどんな街でしたか?

A:メルボルンの街並みは、ヨーロッパ調の古い建物と新しい建物がうまく溶け合っていて、とてもきれいです。人が多い街の中心部でも、すぐ隣には緑いっぱいの公園があったりと、自然も豊か。夏の海は最高にきれいですよ。メルボルンは移民が多いので、街を歩くだけでも様々な文化と触れ合える点がとても好きです。

Q:留学先の高校について教えて下さい。

A:Glen Eiraは小さい学校なので科目のバリエーションは少ないですが、先生との距離がとても近くてアットホームな環境でした。先生が生徒1人1人をケアしてくださり、ホストファミリーとのトラブルですぐに次の家を探さないといけなかった時も、先生が候補のホスト宅の下見に連れて行って下さったり、とても心強いサポートをしてくださいました。学校にELCがあるので、留学生の数は比較的多かったと思います。様々な人種が溶け込んでいるクラスというのも、とても良かったです。

Q:語学力アップのためにどんな工夫をしましたか?

A:自分の気持ちや表現力を豊かにするために、毎晩、英語で日記をつけました。他に心がけたことは、授業に積極的に参加して周りの人と良い関係を作っていくことです。毎日英語の新聞を読むことも習慣でした。

Q:英語力が伸びたことを実感できたのはどんな時ですか?

A:学校の先生や友達にいろいろと相談した時です。深い内容まで話せていた自分に気づき、初めて英語力が伸びたのを実感できました。また、両親がメルボルンに来てくれた時に、レストランの予約や観光の手配を通して英語力が伸びたのがわかりました。

Q:学校で好きな科目は何でしたか?

A:ESLです。これは日本の国語にあたる科目だと思います。毎回、様々な時事問題を取り上げて各自で調べて考えをまとめ、ディベートやディスカッション、プレゼンテーションをしました。準備に時間がかかり大変でしたが、トピックが毎回変わるので知識も増え、問題に対して柔軟に考えられるようになり、とても身になりました。

Q:日本の学校にはないようなユニークな科目や行事、学校の習慣などはありましたか?

A:日本のように文系・理系で科目が分かれているのではなく、早くから将来を見据えて自分で必要な科目を選び、大学のように受ける科目の教室に移動するというシステムが特徴的だと思います。コンピューターを使う「Visual Communication」の授業は、作品や広告で使用されているアートが私たちに何を訴えているのかを読み取るという内容で、とても面白かったです。年になるので、今まで以上に積極的に何でもチャレンジし、悔いのない留学生活を送りたいです。

Q:高校ではどんな風に友だちを作りましたか?

A:現地でできた一番初めの友達は、学年は違うけれど同じ学校の女の子です。バス停で私から話しかけ、それからは朝バスで一緒に話しながら学校に通いました。話しかける時は、緊張したのを覚えています。留学当初はELCでできた友達が多かったです。彼らとはとても良い関係を築けたので、今でも連絡を取っています。
Y11になると授業で一緒の子と仲良くなり、わからない問題を教え合ったりしました。Y12では委員会に所属していたので、委員会の活動を通して友達の輪が広がったり、先生と接する機会も多くなり、よく相談にも乗ってもらっていました。

Q:放課後や週末はどうやって過ごしていますか?

A:週末はホストと一緒によくガレッジセールに行きました。家のフェンスに風船がついてるとガッレッジセールのサイン! いらなくなった物を安く売り出すという家庭版フリーマーケットのようなものです。また、友達とプールに泳ぎにいったり、ショッピングをしたり、図書館で勉強したりしました。Y12になると学校の課題と受験勉強を両立させるため、学校帰りにも街の図書館によく行きました。毎週火曜日は映画が安く観られるので、友達とよく映画も観に行きました。

Q:部活動など、勉強以外でがんばっていたことは?

A:何か新しいことを始めたかったので、留学1年目の1年間はテニスを習いました。また、9日間マウンテンバイクを乗り続けてヴィクトリア州を横断するというGreat Victorian Bike Rideに参加したりしました。体力的にも精神的にも辛いものでしたが、オーストラリアの大自然を感じることができ、とても良い経験になりました。ゴールした時には「やり遂げた」という自信を得ることができました。
Y12の時は学校の委員会に所属していたので、コスチュームデー(学校に好きな仮装をしていく日)の企画や、Y12のジャンパーのデザインの企画に携わりました。私はコスチュームデーでピカチュウの着ぐるみを着て登校したのですが、かなり好評で、特にY7の生徒たちから大人気でした(笑)。

Q:ホームステイはいかがでしたか?

A:3年間の高校留学で、私は4つのホストファミリーを経験しました。1、2、3番目のホストファミリーとは様々な問題があって、毎日のように悩み、辛い時期が続きました。「なんでこんなところに来てしまったんだろう」と思ってしまった時もありました。しかし振り返ってみると、逆にいろんな家庭を知ることができたのは財産だなと思います。オーストラリア人の若い子たちも一緒に下宿している家庭、複雑な家族関係の家庭や宗教心の強い家庭…。様々な人たちと一緒に過ごしました。日本にいると、自分の家族以外の家庭を知る機会は少ないと思います。自分が実際にその家庭に入って一緒に生活するということで、他人の話を聞くだけではわからないこともいろいろ見えてくるんです。
特に印象に残っているのはユダヤ教のホストファミリーです。台所に流し台とテーブルが2つずつあることに最初は驚きました。肉料理なのか魚料理なのかで、使う食器や流し台も違うんです! オーストラリアに来て、まさかユダヤ教を知ることができるなんて自分でも想像していませんでした。4つ目のホストファミリーとは、最後の1年半を一緒に過ごしましたが、彼らとは今でも連絡を取り合っています。子供たちに日本語を教えてあげたのがきっかけで、日本語に興味をもってくれ、現在、その子たちも学校で日本語を選択して勉強していると聞いて、とても嬉しいです。今度メルボルンに行くチャンスがあれば、絶対に会いに行きたいです。

Q:高校留学によって自分が変わったと思うのは、どんな点ですか?

A:海外生活では、毎日がわからないことばかり。自分で調べたり、聞いてみたり、アクションを起こさないと何も始まりません。そのおかげで積極的になり、行動力がつきました。
また留学中は、自分と向き合う時間が多かったように感じます。どんなに辛かった時でも、自分は多くの人から支えられていることがわかるようになり、周りの人に感謝できるようになりました。留学前の私は、自分の中の「他人と違う部分」を抑えていました。しかし、オーストラリアは移民の国なので、隣の席に座っている子の肌の色から違うんです。人と違って当たり前です。お互いの違いを認め合って暮らしているという雰囲気が、私にはとても居心地が良かったんです。オーストラリアで暮らしてみて「自分は自分でいいんだ」とわかり、自分が出せるようになりました。
私の変化に一番驚いてくれているのは自分よりも両親です。留学中は必死だったので、自分はどう変わっているのかはっきりわかりませんでしたが、改めて日本で暮らしてみるとその違いに気づきます。

Q:大学進学に際し、高校留学は有利でしたか?

A:理系の学部は帰国子女枠入試を設けている大学が少なく、医療系の学部を目指したので、進学には苦労しました。一般入試にも対応できるように、帰国した際は予備校に通ったりしましたが、一般入試で「日本の高校を卒業していない」ということで願書を受け取ってくれなかった大学も中にはありました。第一志望だった愛知学院大学は、帰国子女枠でも英語や小論文、面接試験の他に化学の学科試験がありました。留学中から自分で勉強し、帰国子女枠で合格することができました。選択が限られてしまう理系の大学受験は、前々からの準備が必須です。現地でも自分で準備していかなければなりません。「帰国子女の薬学部受験は難しい」と多くの人から言われましたが、不可能ではありません! 努力次第だと思います。
留学前、将来に直接結びつかない留学という道を選んだことに関して、周りから多くの批判を受けました。「日本の高校を卒業したほうがいいんじゃない?」「なんでわざわざ遠回りをするようなことをするの?」と厳しいことを言われた時もありました。でも、今思うと決して遠回りではなく、逆に人生の近道だったと思います。

Q:なぜ、薬学部を専攻したのですか?

A:薬学部で学ぶ内容に興味があったからです。私の場合、留学する前から薬学部を目指していました。体質的に幼いころから薬というのは身近な存在だったので、薬の作用に興味があったのですが、薬学部は薬の知識以外に「健康全般について学ぶ学部」と知ったのがきっかけです。 健康について興味のある私にとって、薬学部はまさに私の学びたいことが学べる学部です。

Q:大学生活で、留学経験が活かせていると感じるのはどんな時ですか?

A:学校で英語を話す機会はありませんが、理系は意外と英語の知識が要求されます。薬学系の授業では英語の単語が頻繁に出てきます。論文や文献も英語で書かれているものが多いので、留学して身につけた語学力は理系でも十分活かせています。語学力以外でも、大学の授業では課題について調べて発表する機会が多いのですが、現地の高校で何度もプレゼンテーションを経験したおかげで、戸惑うことはありませんでした。
まだ先のことですが、ホームステイで幅広いバックグラウンドの人たちと一緒に過ごした経験は、将来様々な家庭環境の患者さんと接するにあたって、必ず役に立つと思います。

Q:キャンパスライフは楽しいですか?

A:薬学部は勉強が大変です。講義だけでなく実習も入っているため、朝から夜まで学校です。勉強についていくのは大変ですが、今まで勉強したかったことが学べて本当に幸せです。料理が好きなのですが、今は健康を意識した料理を作ることがとても楽しく、勉強の合間の気分転換になっています。

Q:中村さんの将来の夢を教えて下さい。

A:将来何をやりたいかはまだ決まっていませんが、まずは国家試験に合格することが目標です。その後、語学力を活かして日本の医療に貢献できるような道を探したいです。私自身、海外生活で病気になった時はとても不安でした。自分自身の海外経験を活かして、より多くの人の気持ちを理解し、力になれればと思います。

Q:これから高校留学を目指す人たちへ、アドバイスをお願いします。

A:留学生活の8割は辛いことだと思います。しかし、終わってみれば、大変だったことや辛かったことよりも、それを通して得られたものの方が比べられないほど大きいです。出発前に夢ばかり膨らませると、壁にぶつかったときに挫折してしまうかもしれませんが、留学は辛いものだという事を多少覚悟していれば、留学先で何が起ころうと絶対耐えられると思います。留学の目的は1人一人違って当然です。留学という大きなチャンスを無駄にせず、自分をしっかり持って頑張ってください!

■留学カウンセラーからのコメント

真未さんは、初めてのカウンセリングで話したときから、留学をやり遂げるという強い意志を持っていました。また、一緒にいらしたお母様からは「応援します」という力強いお気持ちを感じました。でも留学先では良いことだけではなく、度々のホスト変更など、辛い経験もありました。それを乗り越え、そして初志貫徹で志望の学部に合格した真未さんからは、留学で培った自立心と自信を感じます。
人と違ってよい、と言うことは決して他人をないがしろにすることではなく、人と違うことを理解することで、より他人を大事に思うことができる、ということだと思います。
これからも目標に向かって真未さんのペースで歩んでいっていただきたいと思っています。

中京テレビ国際交流委員会 留学カウンセラー
伊藤 敦子