IBP体験談
日本を飛び出した僕らのリアルストーリー
日本を飛び出した僕らのリアルストーリー
鈴木俊也(すずきしゅんや)
25歳(IBP参加時)
東京大学工学部・
東京大学大学院工学系研究科卒
留学期間/2014.4~2015.3
留学先/ワシントン大学(USA)
インターンシップ先/Bonsai Media Group
大学院が1年終わった段階で休学してシアトルに留学しました。帰国して、現在は政府系金融機関で主にM&Aを中心としたアドバイザリーサービスを担当しています。IBPを選んでよかったと思う一番の理由は、ビジネスセミナーなどの機会が多く、人との出会いに恵まれたこと。特に印象的だったのが、留学して間もない頃に参加したIBP生限定セミナーです。そのときの講師はシアトルのマイクロソフトに勤める日本人エンジニアで、彼は世界の中で日本人のプレゼンスが下がっていることに対して強い危機感を持っていました。
曰く「90年代に比べて、マイクロソフト内でも日本人技術者が減っている」「マイクロソフトのトップも、グーグルのトップもインド人。他のアジア諸国が台頭すれば、相対的に日本のプレゼンスが下がる」「日本人はもっと世界に出て行かないと、今後ますます勝ち目がなくなる」「日本人はもっとやれると証明したい、このままでは悔しい」…。彼の話は、私が日本にいる頃から抱いていた想いと、ぴったり重なっていたのです。
私は大学院で土木を専攻していて、日本の技術レベルの高さをよく知っていました。それに反して、日本の技術に世界的なプレゼンスがないことも。「この問題を解決するためには、一度海外に出てビジネスの現場に触れることが必要なのではないか。」それが、私がビジネス留学を志した理由です。実際にシアトルに渡り、IBPセミナーで日本人エンジニアの話を聞いて「やっぱり、ビジネスには、グローバルな視点が必要なんだ。自分の考えは間違ってない。」と深い共感を覚え、問題意識が明確になった。留学中にプロジェクトを立ち上げるきっかけになった、強烈な出会いでした。
IBPセミナーを経て、留学後2ヵ月ほど経った頃に仲間たちと「Arch for Startup」の活動を始めました。目的はシアトルと日本のスタートアップを結び付けること、文字通りスタートアップの架け橋になることです。立ち上げメンバーの一人は現地でのミートアップで知り合った同じIBP生で、彼も私と同じように、世界において日本人の存在感が薄いことに危機感を持っていました。シアトルで色々なベンチャービジネスの集まりに顔を出したが、他のアジア人はいるのに日本人がほとんどいない、というんですね。「こんなにベンチャービジネスが盛んなシアトルなのに、その情報を、日本のスタートアップに伝える人がいないんだ。だから自分たちが伝えよう」と考えがまとまりました。
具体的には日本のスタートアップにシアトルのベンチャーキャピタルを紹介したり、現地のコンサルタントと協業して事業のサポートをしたり、自分たちでサイトを立ち上げて情報発信し、大学でミートアップを主催したことも。起業をめざす学生はもちろん、日本に縁のある人、日系二世三世の人たちなど色々な人が来てくれました。
2、3人のメンバーでスタートしたプロジェクトですが、最終的には賛同者が集まって数十人規模に。私が日本に帰国してからも活動は続いていて、今、ちょうど再編のタイミングです。続けていけばいつか、日米のスタートアップ同士が出会って新たなイノベーションが起きるような、大きな成果に結びつくと思います。
英語の武者修行も兼ねて、IBPのプログラム以外にも、ミートアップやイベントにはできる限り顔を出していました。色んな体験をしましたが、忘れられないのが、友だちに誘われてあるハッカソンの発表会を見に行ったときのこと。小学生が「僕たちのつくったゲームは…」…なんて堂々と、みんなの前でプレゼンテーションしていたんです。衝撃的な光景でした。なんというか、日本との差を見せつけられた感じです。日本と違ってアメリカには年齢に関係なく長所を伸ばす教育システムがある。この違いは大きいな、と思いました。
これも留学中に聞いた話ですが、アメリカでは幼稚園からプレゼンの練習を始めるというんです。最初はみんなの前で「自分のお気に入り」を発表し、小学校ではもっと戦略的になってきて、伝える順番やボディランゲージまで含めてトレーニングするとか。私たち日本人が大人になって初めて触れるスキルを、アメリカでは小学生レベルで身につけていくんです。多民族国家だから主張しないと生きていけない、ということなんでしょう。これは日本人にも必要なスキルだと思います。日本の中だけでビジネスをやるのならいいんですが、世界では、主張しないと生き残れませんから。
その意味で、「私なんか…」という態度の人には、シアトルでは一人も出会いませんでした。シャイな人はいなかった。自信の持ち方が違うというか。例えばフェイスブックでも、みんな想像以上にフランクで、私も留学してあっという間に友だちが2倍になりました。留学中にできた色々な国の友だちと、今も当たり前につながっています。
私自身はネットワーキングが全てだとは思いません。しかし留学してみてその大切さがよくわかったし、日本にはネットワーキングの文化が足りないかも、と思うようになりました。仮に世界の誰もが欲しがる技術を有していていも、技術だけでビジネスは成功しません。その技術を世界につなげる人が必要です。私が政府系の金融機関に就職した理由も、そこにあります。
IBPで経験したことは、全部が私の財産です。大学での学びも、休暇を使ってカナダでスノボをしたことも、インターンシップで西海岸のビジネスを体感できたことも。シアトルは、自然が豊かで暮らしやすく、だから世界中から人が集まる、人が集まるからイノベーションが生まれるんです。将来はそのシアトルを含め、世界における日本のプレゼンス向上に資する仕事がしたい。その先では、いつか自分がプレイヤーになって事業を起こしてみたいと思います。