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  • IBPビジネス留学修了生特別インタビュー:ウエストミンスター大学
ロンドンでなければ、決して見えなかった世界がある。

鬼木生子(おにきしょうこ)
20歳(IBP参加時)

創価大学 経済学部
留学期間/2014.5~2015.3
留学先/ウエストミンスター大学(UK)
インターンシップ先/
①Barnet Refugee Service(難民支援NGO)
②Afghan Association Paiwand(難民支援NGO)

教室で起こった宗教対立

大学を休学して、IBPで1年間ロンドンに留学しました。ロンドンを選んだ理由は、もともと国際協力に関心があって、開発学(途上国の産業開発や経済開発について学ぶ学問)を深く学びたいと思っていたから。「開発学を学ぶならイギリスがいいし、イギリスに行くなら大学で学べてインターンシップも経験できるIBPがいいよ」。大学の教授や先輩方がそんな風に薦めてくださったのもあって、ウエストミンスター大学コースを選択しました。インターンシップの期間が長いのも魅力でしたね。他のプログラムや交換留学も考えたけど、それだと長期のインターンシップまではできなかったので…。

イギリスはかつて植民地を保有していて、だからこそ当時支配していた国々の発展に貢献したいという考え方があるのと、途上国に関する情報も多いので、世界の中でも特に開発学が進んでいるんです。それに、ヨーロッパの近隣諸国、中東、アフリカにも近く、移民がものすごく多い国。中でもロンドンは3分の2が他国からの移民だと言われていて、大学には色々な国や人種の人たちが通っていたし、開発学のクラスにも私のような留学生も含めて本当に色んな人たちがいました。中には、シリアの紛争地域から逃れてきて、実家はまだそこにあるんだ、という友だちも。そういう人たちの生の声を聞けたのは国際協力を志す上でとても貴重な体験だったし、ロンドンでしかできない勉強ができたと思っています。

取ってよかったと思う授業は安全保障について学ぶ“International Security”。国際紛争やテロを取り上げることもあり、ロンドンならではの科目だと思います。毎回ある課題に沿ってディスカッションするんですが、さきほど言った通り受講生の国籍、宗教、価値観がそれぞれ違っていて、あるときには信教の違う学生同士が言い争いを始めてしまったことも。議論を通り越してどんどんエスカレートして、しまいにはケンカになって…。私はもう全く話に入れず、ただ見ているしかできませんでした。宗教が原因で、目の前で実際に激しい対立が起きている。そういう場面に居合わせたことは、たぶん忘れられないと思います。

街中に、銃弾のあとが残っていた

忘れられない体験といえば、クリスマス時期の休暇を使ってボスニア・ヘルツェゴビナを旅したこと。せっかく大学で国際紛争について勉強したんだから、現場をこの目で見てみたいと思って。さすがに今紛争が起きている地域には行けませんから、私が生まれた頃、つまり20年くらい前に紛争が起こったボスニアを旅してみようと一人で出かけました。観光地以外の場所に行きたくて、移動はすべてバス。かなりの距離を移動したんですが、田舎から都会へだんだん街並が変わっていく様子がよくわかりました。安宿を探して行ったおかげで真冬なのにシャワーが水しか出なくて、凍えそうになったことも。クリスマスイブに、ですよ。けれどそんなことより心に焼き付いているのは、街のあちこちに銃弾の痕が残されていた、その光景です。

建物にも、家にも。銃弾の痕がいくつも残っている家で、みんな今も暮らしているんです。「サイレンが鳴って銃撃が始まり、自分のお爺さんが撃たれて亡くなった…」お家の方からそういったお話を聞いたりもしました。ヘルメットや手榴弾が当時のまま残っていました。紛争があった20年前にインフラが破壊されたせいで、今も生活に困っていたり、教育を受けられない人がいる。授業で習っていたものの、想像以上に過酷な環境に驚き、その人たちに私は何か協力したい、未来が今よりよくなるように、何か自分にできることを…と、自分の将来について改めて思いを強くした旅でした。

それでも、人は分かり合える

価値観の違いを乗り越えるのは確かに難しいかもしれません。でも私は、人と人がちゃんと向き合えば、分かり合えると信じています。楽観的かも知れないけれど、そう思える出来事に留学中に出会えたから。実はロンドン滞在中に、ローマで行われたノーベル平和賞受賞者のサミットに参加する機会がありました。これも留学先にロンドンを選んだからこそ巡ってきたチャンスだと思います。そこで行われたパネルディスカッションに、2つの国の女性指導者が参加していました。一方はかつて相手国に侵攻した側、もう一方は侵攻された側。「許せない」という被侵攻国側の言葉に、侵攻国の指導者が「国を代表して謝ります」と、壇上で謝罪したのです。二人の女性が泣きながら抱き合う姿を見たとき、確信しました。人と人がつながれば、国と国もきっとつながるんだと。

ロンドンで夢への一歩を踏み出した

今、ロンドンでの生活を振り返って、全部が自分の将来につながっていると感じています。例えば授業で、インド人、韓国人、ソマリア人、バングラディシュ人、そして日本人の私でワークショップをやったこと。バックグラウンドが違いすぎて全く話がまとまらない中で、私が一つの方向性を示したところ「いいね!」と賛同してもらえて、この経験は就職試験のワークショップで多いに役に立ちました。

念願のインターンシップは2つの難民支援NGOで体験しました。一つのNGOではインターンシップの総時間が修了条件に満たなかったからなのですが、結果として、いい経験ができたと思います。一カ所のNGOではシリア難民の英語教育のサポートやお話し相手、難民同士のネットワークを作るお手伝いなどを行いました。落ち込んでナーバスになっている人には、こちらが話すよりも相手の話をひたすら聞くこと、黙りこんでいる人に無理に話させようとしないこと、ショッキングな話を聞いても取り乱さないことを、いつも心がけていましたね。もう一カ所ではデスクワークで、外部審査機関の「格付け」を取得する業務を担当。こちらの方が難しかったかな。慣れないし、ほぼ一人で任されていたので…。でも、NGOにも格付けがあるんだと分かり、組織運営の一端を担えて嬉しかったです。

将来の道を示してくれる人と出会えたのも、IBPに参加して得た大きな収穫です。ウエストミンスター大学には社会人で大学院に留学して国際協力を学んでいる日本人も多く、彼らとは授業以外の勉強会で知り合うことができました。言われたのは「国際協力を仕事にするなら、ゼネラリストよりも、自分の専門領域を持っているスペシャリストになる方がいい」ということ。「それなら」と、私もいったん日本で就職する道を選びました。社会人として自分の専門性を磨いたらもう一度ロンドンに戻り、大学院で国際協力をもっと学んでゆくゆくは国際協力機関で働きたい。それが絶対に叶えたい私の夢。IBPでのロンドン留学は、私にとって夢への大きな一歩になりました。


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